下肢の静脈瘤
日本皮膚科ガイドライン.創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン-5:下腿潰瘍・下肢静脈瘤診療ガイドライン.日皮会誌.2017;127(10):2239-2259.
下肢静脈は、大まかに表在静脈・深部静脈・交通枝(穿通枝)に分けられる。
下肢静脈瘤~下肢表在静脈が拡張・蛇行する疾患である。瘤と書くが、必ずしもコブ状でない場合も含まれる。一次性と二次性に大別される。
一次性;拡張・蛇行している静脈そのものに原因がある場合
分類;下の写真の①~④に分類されるが、同時に認められることがある。②~④は小静脈瘤と総称されることもある。
①伏在型静脈瘤(本幹型静脈瘤)~治療を必要とする一次性静脈瘤では最も多い。
大伏在型静脈瘤;大腿から下腿の内側に静脈拡張・蛇行。内果上部や下腿前面にうっ滞性皮膚炎や潰瘍を伴うことがある。
小伏在型静脈瘤;下腿後面の静脈拡張や分枝静脈の拡張をみる。外果上部にうっ滞性皮膚炎や潰瘍を伴うことがある。進行例では、下腿内側に及ぶこともある。
大小伏在型では、下腿の下1/2の全周性になることがある。
②側枝型静脈瘤~伏在静脈以外の表在静脈が拡張・蛇行しているもの。とはいえ、単独で出現することは少なく、伏在静脈と一緒に起こることが多い。
③網目状静脈瘤~径2-3mmの静脈が青く網目状に拡張するもの。
④クモの巣状静脈瘤~径1mm以下の細い紫紅色の静脈が生じるもの。
二次性;拡張・蛇行している静脈そのものに原因がない、二次性(続発性)に病変が存在する場合。深部静脈血栓症や妊娠、骨盤内腫瘍、動静脈廔、血管性腫瘍などがある。
それぞれの疾患に関しては割愛。
一次性に多い(二次性でも起こり得る)が、うっ滞性皮膚炎を生じることがある。
うっ滞性皮膚炎~うっ滞性湿疹・静脈うっ滞≒静脈高血圧状態で生じる。
静脈高血圧~通常、立位安静時では約80-100mmHgの静脈圧は、足関節運動(つま先立ちなど)の筋ポンプ作用で速やかに約30mmHg以下に下がるが、一次性静脈瘤では静脈弁不全のため・二次性では静脈閉塞などでほとんど低下しないまたは上昇する状態(一次性は少し下がりやすいが二次性でも下がることがある;伏在静脈のバイパス機能などによる)。
鍼灸師も知っておきたい検査
①ドップラー聴診~超音波ドプラ聴診器を用いて血流の状態を聴く方法。
②トレンデレンブルグ検査~大・小伏在静脈および穿通枝の弁機能を調べる方法。
http://kumicho.asia/trendelenburgtest-perhtestest-2328.htmlより
静脈瘤がある方には、まずは下肢挙上を行う。
挙上で消失⇒一次性の可能性が高い。
挙上で消失しない⇒二次性の可能性が高い。
可能ならば、ペルテステスト(Perthes test)をする。
筋ポンプ作用で軽減したら二次性(深部静脈)の可能性は下がる。
③ABIまたはABPI(下肢血圧/上腕血圧比)
上腕(左右の高い方)と下肢は後脛骨動脈や足背動脈の血圧を測定し、その比を算出する方法。正常範囲は1.0~1.4で、0.9以下は異常と判断するが、下肢の動脈硬化ではABIが正常範囲になることも多いので、単独での判断はしない。
鍼灸以外の治療法
圧迫療法~弾性包帯や弾性ストッキングを用いる。潰瘍がある場合は包帯・ない場合はストッキングが使いやすい。
ABIが0.8以下では、圧迫療法は行わない方がいいとする報告があるため、測定してからの方が望ましい。
高齢者や握力の弱い方にはストッキングははきずらいので、サポートストッキング(ひきしめ用ストッキング・圧着ストッキング)を代用するのも方法。
外科的手術
静脈瘤がある患者さんは、ときどきみかけます。
どこまでを保存的治療で行い、どこから外科的手術を検討するのか?
その線引きは難しいです。
なにか参考となるものがありますか?