胸水に対する身体所見の精度
本日は、胸水の身体所見です。
Wong CL, et al. Does this patient have a pleural effusion? JAMA. 2009 Jan 21; 301(3): 309-17.
胸水は、呼吸器症状を有する患者で現れることが多い。
超音波検査や胸部CTで発見できるが、すべての人に行わないため、身体所見である程度絞り込みたい。
鍼灸師は、呼吸器症状を有する人で胸水の有無を確認したい。
では、その身体所見の精度は?
310の報告が集まったが、最終的には5件(n=934)が厳選された。
5件の情報
5つの報告から8つの身体所見の精度を検討した結果、
打診にて濁音:感度73(61-82)%、特異度91(88-93)%、LR+8.7(2.2-34)、LR-0.3(0.03-3.3)
聴性打診:感度77(71-83)%、特異度92(89-94)%、LR+7.7(2.4-25)、LR-0.3(0.07-1.0)
呼吸音聴診で減弱:感度88(76-95)%、特異度83(78-88)%、LR+5.2(3.8-7.1)、LR-0.2(0.1-0.3)
非対称性の胸部拡張:感度74(60-84)%、特異度91(86-94)%、LR+8.1(5.2-12.7)、LR-0.29(0.19-0.45)
聴性声音振盪低下:感度76(63-86)%、特異度88(83-92)%、LR+6.5(4.4-9.6)、LR-0.3(0.2-0.4)
声音振盪低下:感度82(70-91)%、特異度86(80-90)%、LR+5.7(4.0-8.0)、LR-0.2(0.1-0.4)
クラックル欠如:56(42-69)%、特異度62(55-68)%、LR+1.5(1.1-2.0)、LR-0.71(0.52-0.97)
胸膜摩擦音:5.3(1.1-14.6)%、特異度99(96-100)%、LR+3.9(0.80-18.7)、LR-0.96(0.90-1.0)
その結果、
研究間で統計的な異質性はあったものの、
感度が最も高いのは、「呼吸音の聴取で減弱」
特異度が最も高いのは、「胸膜摩擦音」
LR+が最も高いのは、「打診にて濁音」
LR-が最も低いのは、「声音振盪低下」
総合的に、打診と聴性打診の精度が良かった。
呼吸器症状を訴える方が来られ、胸水の有無を聴性打診で確認する際に、
事前確立を5%と仮にした場合、
陽性所見の事後確率は、約30%に上がり、
陰性所見の事後確率は、約1.5%に下がる。
打診や聴性打診は有用な方法で、単独よりも複数を組み合わせることが当然だが好ましいと思われます。