お腹の聴診で、腸閉塞が判断できるか?
本日は、腸閉塞の身体所見についての報告です。
急性腹症患者さんでは、腸閉塞はレッドフラッグになります。
そんなときに腹部の聴診を行いますが、その精度はどうなのか?
Breum BM, et al. Accuracy of abdominal auscultation for bowel obstruction. World J Gastroenterol. 2015 Sep 14;21(34): 10018-10024.
腸閉塞に対する腹部聴診の精度
腸閉塞は、腸の壊死や穿孔といったリスクが5-16%あり、早期発見が重要。
腹部の聴診は低コストで迅速に行える方法で、
腸閉塞患者では、「多動性」、「チクチクする音」、「金属音」、「高音」といった表現で表される。
腸閉塞疑い患者の腸音を評価し、精度と評価者の一致度を検討。
16歳以上の腸閉塞または便秘が疑われた98人が対象(特に除外基準はなし)。
内訳は、年齢中央値66歳(19-96歳)、53人女性
電子聴診器を使って、腹部6か所から計25秒の腸音が録音・作成された。
この腸音を、33名の若手医師と20名のベテラン医師に聴いてもらい、診断してもらった。
その結果、47人の患者が開腹手術を受け、37人が腸閉塞だった(小腸閉塞20人、大腸閉塞15人、結腸直腸ステント留置2名)。
腸閉塞以外の疾患はTable1。
腸閉塞の37人 と腸閉塞以外の61に対して、医師1人あたりの腸音異常の有無を判断した割合は、腸閉塞があった患者の方がわずかに高かったが有意差はなし。
医師全員の腸閉塞に対する病的腸音
感度:42(19-64)%
特異度:78(35-98)%
若手医師とベテラン医師の間でも精度に有意差はなし。
観察者間の一致は、中央値0.29だった。
これより、腸音での腸閉塞の精度は低い。また、一致率も低い。
腸音のみで腸閉塞を除外または確定することはできない。
65歳以上で1週以内の急性腹症患者で、腸閉塞は20%(小腸閉塞12%、腸管ヘルニア5%、S状結腸捻転2%、大腸閉塞1%)という報告があります(Ann Emerg Med.1990; 19(12): 1383-6.)。
腸音は今回の報告ではあまり有用ではないようです。
組み合わせ次第では使えるかもしれませんが、単独での判断は危険かもしれません。