顔面神経の深さを調べてみた件
本日は、ベル麻痺患者における顔面神経の深さを測定した報告です。
顔面神経は、第7脳神経で副交感神経線維を有し、表情筋を支配する。
発生学的に表情筋は、「魚のえら」が分化・進化したものとされています。
水上から陸上に上がり、えら呼吸から肺呼吸に変わると、エラは必要なくなり、表情筋に変わったとされています。そのため、エラに相当する部分に顔面神経が通る経路が発達したと思われます。
この顔面神経がウイルス再活性化で、表情筋が麻痺するものが顔面神経麻痺です。
顔面神経麻痺で最も多いのが、ベル麻痺と呼ばれる麻痺です。
本日は、ベル麻痺患者を対象に、茎状突起のレベルで麻痺側と非麻痺側の顔面神経の深さに違いはあるか?を検証したものです。
Karaca H, et al. Measurment of the depth of facial nerve at the level of stylomastoid foramen using MR imaging in Bell's palsy. Clin Imaging. 2019 Jun 14; 58: 34-38.
対象は、43人(男性20人、女性23人、平均年齢43.8±15.2歳)のベル麻痺患者。
頭部MRIを行い、顔面神経の深さをアキシャルポストコントラストCUBEシーケンスなる測定方法で測定したそう。
また、顔面神経の深さと、年齢・性別・BMI・慢性疾患と関連があるかも調べた。
その結果、
顔面神経の深さは、非麻痺側に比べ麻痺側は有意な差があった。
麻痺側:32.9±5.4mm
非麻痺側:36.9±5.1mm
男性と女性では、深さに有意差はなし。
男性:31.2±4.6㎜
女性:34.7±5.7㎜
顔面神経の深さと、
年齢:(r=0.288, p=0.270)
BMI:(r=0.215, p=0.999)
ベル麻痺重症度スコア(HBスコア):(r=0.031, p=0.999)
と相関はなし。
茎状突起を通る顔面神経は、麻痺側はより表面を通る。
経穴では、翳風穴に相当するものと思います。
この部分は、顔面神経麻痺の治療穴ですので、刺鍼時は、この深さを意識するといいかもしれません。
今回の測定時期は、ベル麻痺発生から10日以内なので、局所の炎症が起きていると考えられます。そのため、神経浮腫が起こり、表面にでてきているのでしょうか?
経時的変化もあれば、より詳細な報告になりそうです。