耳の下の腫れ
先日、当院に腕の痛みを主訴に来られた70代男性の患者さん。
既往歴に心筋梗塞、胸部大動脈瘤(現在も)あり、ワーファリンを服用中。
側臥位になってもらうと、耳の下が腫れぼったいことに気づき、触診すると表面は柔らかいけど、中は硬い。痛み・熱感はなし。発熱もなし。
いつから腫れているのかは分からない(奥さんに聞いても不明とのこと)。
よく分からなかったので、写真を撮らせてもらい、調べていたら、耳下腺腫瘍のキーワードにいきつきました。文献を読んでみたので、まとめておきます。
嶋根俊和、他.当科における耳下腺腫瘍の検討.耳展.2008;51(4):226-231.
吉田正、他.両側性耳下腺ワルチン腫瘍例.耳鼻臨床.2002;95(4):371-375.
腫瘍の中では耳下腺腫瘍は、比較的頻度が低い(頭頚部腫瘍の約5%)が、その種類には、多形腺腫とワルチン腫瘍が主。
耳下腺腫瘍84例をまとめた報告では、ワルチン腫瘍41.6%、多形腺腫34.5%。
性差は、多形腺腫は女性が多く、ワルチン腫瘍は男性が多かった。
良性が多いが、まれに悪性もある。
40歳以下でワルチン腫瘍例は0例。60歳代でワルチン腫瘍の好発ピーク。
27例のワルチン腫瘍についてまとめた報告では、片側性が多いが、両側性も10%程度ある。また多発性もある。
今回の私の経験した患者さんは両側が腫れていました。
ワルチン腫瘍の女性↓
両側・多発性のワルチン腫瘍例
治療は、外科手術だが後遺症が残ることがある。
唾液廔とは、唾液腺を包む膜を手術で一旦破き、縫合するのだが、それが不十分だと唾液が皮下に漏れること。
フライ症候群は、耳下腺に唾液分泌を促す耳介側頭神経が、皮膚の汗腺ともつながり、食事などで唾液分泌とともに耳たぶ周囲で汗も出る現象。
好発年齢・触診・疼痛なしなど、あてはまる事項はあり、否定することが困難だったため、耳鼻科受診を勧めました。間違っていればそれに越したことはないので、疑わしいのであれば、病院受診を促すのがよさそうです。