夜間頻尿は、全身性疾患と捉えた方がいい
本日は、下部尿路症状の中の夜間頻尿についてです。
夜間頻尿は、就寝中に2回以上の排尿行動があり、なんらかの生活の支障が生じることを指す。
頻尿というと膀胱の問題と思われがちですが、
実際には、脳・心臓・腎臓・膀胱といった臓器が複雑に関係しています(Eur Urol Focus.2019 Aug 5.)。
例えば、心臓では「心房性ナトリウム利尿ペプチド:BNP」が生合成され、必要に応じて分泌されています。心臓に異常があると(例えば高血圧や心疾患など)、多尿になることが知られています。このように、心臓も頻尿との関連性があります。
そのため、腎臓の問題、膀胱の問題と考えるよりも、全身性と考えた方がいいと思います。
鍼灸医学は、全身の調整を行うものなので、夜間頻尿は得意分野ともいえます。
臓器の問題からだけではなく、ライフスタイルとの関連性も報告があります。
近年、滋賀県長浜市の住民を対象にした報告がいくつかあります。
長浜は豊臣秀吉が関係する場所で有名です。
今回は、その長浜ステディから2編
Tabara Y, et al. Lifestyle habits associated with nocturnal urination frequency: The Nagahama study. Neurourol Urodyn. 2019 Sep 4.
Tabara Y, et al. Association of weak hip abduction strenght with nocturia in old women: The Nagahama study. Geriatr Gerontol Int. 2019 Sep 1.
夜間頻尿の頻度などを日記に1週間記録し、食事や睡眠などとの関連を調べた結果、
夜間頻尿と関連した項目
年齢
男性
高血圧症
睡眠時無呼吸
BNPレベル
コーヒー
緑黄色野菜
就寝時間
関連しなかった項目
乳製品
味噌汁
アルコール
睡眠時間
であった。
睡眠は、寝ている時間の長さは関係がなく、むしろ就寝時間が遅いほど夜間頻尿の頻度が増すということでした。
また、常習的なアルコールは関係がないとは思わず、理由はよく分かりませんでした。
性差もあるようでしたが、
女性の場合は、下半身の筋力低下が関係あるのではないか?という結果もあります。
長浜高齢住民1207人(67.4±5.2歳)を対象に、
夜間頻尿の頻度と身体運動の関連が検討され、
28.1%が夜間頻尿であった。
股関節外転強度が弱いほど頻尿の頻度が高くなるという結果でした。
膝の伸展と股関節屈曲の強度、サルコペニア、片足立位時間、Timed Up and Goとは関連なし.
高齢女性では、股関節外転の強度をみてみるといいかもしれません。
こうした関連がある項目は、患者さんの生活指導に役に立つので覚えておくと便利かもしれません。