子宮頚部の状態が早産と関連するらしい
早産(PTD)は、妊娠37週未満での出生を指すとされています。
新生児死亡の75%が早産が理由の1つとされ、未熟児には脳性麻痺、発達障害、聴覚や視覚の異常などのリスクが高くなることが知られています。また様々な早産対策がとられていますが、それでも世界保健機関の調査では、世界のすべての出生の11%が早産であるとしています(Lancet.2012;379:2162-72.)
こうした早産のリスクを早めに見つけようとする試みがこれまでにもいくつか行われてきました。子宮の中の子宮頚部の長さが関係するとする報告があります。
太田創、他.妊娠中期子宮頸管長の早産予知に関する有用性.昭和学士会誌.2013;73(1):8-14.
1184名が対象で、妊娠16-19週と妊娠20-24週の頸管長から早産リスクがどの程度あるかを検討した。
その結果、
平均分娩週数:38.6±2.4週
早産率:5.9%(35週未満早産2.4%)
16-19週の平均子宮頸管長:40.1±7.4mm
20-24週の平均子宮頸管長:38.2±7.8mm
35週未満の早産有無で子宮頸管長を比較した結果、16-19週と20-24週のどちらも、有意に子宮頸管長が短い。
これらの感度・特異度を計算すると、
となり、25mm(諸外国の基準値)を基準とした場合
16-19週の感度:6.9%、特異度:98.9%
20-24週の感度:24.1%、特異度:96.4%
となり、特異度は高いが、感度が低い結果であった。
これでは見逃しの可能性が出てくる危険性がある。
そこで、最近では、子宮頚部の長さだけではなく、硬さも指標になるのではないかという検討がなされています。
Wang B, et al. Diagnostic accuracy of cervical elastography in predicting preterm delivery: A systematic review and meta-analysis. Medicine(Baltimore).2019 Jul;98(29):e16449.
近年超音波エコーを使って、甲状腺や乳房のしこり、前立腺腫瘍の大きさなどを測定するエラストグラフィという技術があります。
これを使って、子宮頚部の硬さを測定し、早産リスクがあるかを検討した報告をレビューしています。
最終的に厳選された報告は7編。
7編の一覧
それぞれのバイアスリスク以下の通り。
その結果、エラストグラフィの診断精度は、
感度:84(68-93)%
特異度:82(63-93)%
となった。
サブグループ解析では、以下の通り。
単純に、日本で行われた子宮頚部長の診断精度と、エラストグラフィの精度を比べると
エラストグラフィの方が優れているようにみえる。
実際には、両方を用いた方がいいのでしょうが。
では、鍼灸では、早産リスクに対して何かできるのか?
鍼灸分野ではラットを使った報告が多く、子宮に対して鍼や灸がどのような影響を及ぼすかはヒトでは定かではない。
ヒトとラットでは子宮の構造も異なるため、不明な点もあるだろう(全日本鍼灸学会.1999;49(4):555-566.)。
子宮体部の支配神経は下腹神経で、膣部分は骨盤神経支配となっており、子宮頚部はどちらになるのだろう?混在性?
子宮に対する鍼灸治療は、まだまだ調べなきゃ、今の自分の状態では不勉強であることが良く分かった。