手の観察で分かること
脊髄・脊椎疾患における手の症候学: 筋萎縮性側索硬化症におけるSplit Hand.
脊髄外科. 2011;25(3):248-251.
小手筋(手内筋)は、母指球筋・小指球筋・虫様筋・背側および掌側骨間筋などで構成。
その髄節支配はC8-T1(橈骨神経支配はなく、正中神経か尺骨神経支配のみ)、だが短母指外転筋には諸説(C8-T1が多く報告、だがC6-7説、C7-T1説、C6-T1説なども報告がある)あるようだ。
手のどこが筋萎縮を起こしているかで、疾患の鑑別に役立つことがある。
ここでは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)と頚椎症性筋萎縮症の違いで解説。
手の観察ポイント
短母指外転筋(APB)・第一背側骨間筋(FDI)・小指外転筋(ADM)の3筋に注目する。
ALSでは、Split Handと呼ばれる特徴的な手の萎縮パターンを示すことがある。
短母指外転筋と第一背側骨間筋の萎縮が目立ち、小指外転筋は比較的保たれる。というパターンだ。(通常、FDIとADMは同じ尺骨神経支配なのに、萎縮の程度が異なる理由は不明)。
頚椎症性筋萎縮症では、C7-C8髄節支配の筋萎縮が多い。そのため、FDIとADMの萎縮が目立つことになる。しかし、この場合尺骨神経麻痺でも同様の萎縮パターンを示すため、両者の鑑別が必要で、それには虫様筋に注目する。
尺骨神経麻痺では、第2-3指虫様筋は保たれているが、第4-5指の虫様筋が麻痺するため、MP関節の過伸展する。
2008年に多施設共同研究としてSplit Handの特異性を調査。
77名のALS・171名の正常対照・196名の脊髄性筋萎縮症、頚椎症性筋萎縮症、末梢神経疾患で複合筋活動電位(CMAP)が調べられた。
その結果、ALSはAPBとFDI萎縮は有意に高度であるとされた。
Muscle Nerve.2008 Apr; 37(4): 426-30.より
病態生理については、いまだ不明な点は多いが、手を観察することで鑑別が行えることもあり、鍼灸師も知っておいて損はないだろう。