都城鍼灸ジャーナル

宮崎県都城市で鍼灸師をしている岩元英輔(はりきゅうマッサージReLife)です。読んだ論文を記録するためのブログです。当院のホームページ https://www.relife2019.jp/index.html しんきゅうコンパス https://www.shinq-compass.jp/salon/detail/33749

手の観察で分かること

脊髄・脊椎疾患における手の症候学: 筋萎縮性側索硬化症におけるSplit Hand.

脊髄外科. 2011;25(3):248-251.

 

小手筋(手内筋)は、母指球筋・小指球筋・虫様筋・背側および掌側骨間筋などで構成。

その髄節支配はC8-T1(橈骨神経支配はなく、正中神経か尺骨神経支配のみ)、だが短母指外転筋には諸説(C8-T1が多く報告、だがC6-7説、C7-T1説、C6-T1説なども報告がある)あるようだ。

手のどこが筋萎縮を起こしているかで、疾患の鑑別に役立つことがある。

ここでは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)と頚椎症性筋萎縮症の違いで解説。

 

手の観察ポイント

短母指外転筋(APB)・第一背側骨間筋(FDI)・小指外転筋(ADM)の3筋に注目する。

ALSでは、Split Handと呼ばれる特徴的な手の萎縮パターンを示すことがある。

短母指外転筋と第一背側骨間筋の萎縮が目立ち、小指外転筋は比較的保たれる。というパターンだ。(通常、FDIとADMは同じ尺骨神経支配なのに、萎縮の程度が異なる理由は不明)。

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頚椎症性筋萎縮症では、C7-C8髄節支配の筋萎縮が多い。そのため、FDIとADMの萎縮が目立つことになる。しかし、この場合尺骨神経麻痺でも同様の萎縮パターンを示すため、両者の鑑別が必要で、それには虫様筋に注目する。

尺骨神経麻痺では、第2-3指虫様筋は保たれているが、第4-5指の虫様筋が麻痺するため、MP関節の過伸展する。

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2008年に多施設共同研究としてSplit Handの特異性を調査。

77名のALS・171名の正常対照・196名の脊髄性筋萎縮症、頚椎症性筋萎縮症、末梢神経疾患で複合筋活動電位(CMAP)が調べられた。

その結果、ALSはAPBとFDI萎縮は有意に高度であるとされた。

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Muscle Nerve.2008 Apr; 37(4): 426-30.より

 

病態生理については、いまだ不明な点は多いが、手を観察することで鑑別が行えることもあり、鍼灸師も知っておいて損はないだろう。