都城鍼灸ジャーナル

宮崎県都城市で鍼灸師をしている岩元英輔(はりきゅうマッサージReLife)です。読んだ論文を記録するためのブログです。当院のホームページ https://www.relife2019.jp/index.html しんきゅうコンパス https://www.shinq-compass.jp/salon/detail/33749

フルート奏者が有する症状は⁇

中学2年の女の子が先日、母親と来院。

明るく、話の面白い女の子。

吹奏楽部でフルートをしているのだが、肩こりと頭痛が悩みと言われる。

フルートが好きで、好きなことをしているから、多少の痛みなら我慢できるが、

来院時も頭痛があり、頭全体に拍動性の頭痛がある。

手や足先も冷え、夜遅いからシャワーにしか入れない。

睡眠時間は6時間程度で食事はきちんと取れている。

歯ぎしりや噛み癖があり、左右咬筋のバランスが悪い。

 

治療では、冷えの除去が最大の問題点と考え、その治療を行った。

生活指導も行ったが、フルートに関してなんの知識もないため、何も言えなかった。

なので、何かないか調べてみたので、まとめておきます。

 

フルート奏者が経験する筋骨格系症状の有病率を調べたところ、

 

Med Probl Perform Art. 2014 Sep;29:(3):155-62. (アブストラクトのみ)

対象者(年齢など不明)の26.7%がフルート演奏に関する不快感や痛みに悩んでいた。

そのうちの、49.7%は演奏中に集中できないぐらいのを経験。

25.8%は、長時間の演奏ができないと回答。

疼痛部位は、指・手・腕・頸、中/上背部、肩であった。

 

Occup Med (London). 2016 Mar;66(2): 156-63.

複数のデータベースから得られた最終的に7つの報告を集計。

フルート奏者の筋骨格系有病率を調べた。

 

その結果、

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有病率は、学童で79(68-89)%、大学生95%であった。

疼痛部位は、

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上肢症状が多く、背部症状も多い。

頸や腰は、疼痛の期間が長い傾向にあるようです。

 

Med Probl Perform Art. 2012 Jun;27(2):85-94.

大学でチェロかフルートをしている演奏者15人を対象にした報告では、

頸が最も訴えが多かった。

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この15人に8週間、ヨガの呼吸法や柔軟性向上トレーニングなどを行った結果、

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介入前は高い演奏テクニックなどはあるが、身体的苦痛に伴うものであったが、
介入後は、姿勢を矯正することで、身体的苦痛の軽減が図れた。

チェロの奏者は肩関節や肘関節の可動域が広がることで苦痛が解消。

フルート奏者は、足の体重を乗せることが両足にできることで、負担が軽減した。

 

Work. 2011;40(3):255-9. (アブストラクトのみ)

20人のフルート奏者のうち19人が筋骨格障害に悩まされていると回答。

7人は、3か月以上痛みが続いていると回答。

でも、ほぼ全員が痛みを有しているのに、適切な治療や対応がとられていなかった。

 

この他、日本では顎関節症の発生率が調べられています。

J Jpn Soc TMJ.1997;9(1):92-107.

楽器演奏者に顎関節症が多いか?を検討

声楽や管楽器の口使用群

鍵盤楽器や弦楽器の不使用群

一般学生

の3群で、

顎関節症の3症状の単独での有病率を調査した。

その結果、

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特に口使用群で多いというわけではない。

 

複数有するかを検討したら、

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声楽の人で、複数の症状有する割合が多い。

フルートはそこまでってかんじ。

 

管楽器演奏者の胃食道逆流症の頻度について調べたものでは、

Aliment Pharmacol Ther. 2010 Mar;31(5):593-600.

イタリアの21のオーケストラから管楽器414人と他の楽器669人で調査。

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2群には、背景が異なる部分もあることに注意(BMIなどは影響するかも)。

その結果、

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管楽器演奏者は、他の楽器に比べ、胸やけの頻度が高い。呼吸器系の症状は管楽器は少ないようにも思える。

 

全体的には、管楽器演奏者に逆流性食道炎の頻度が高いわけではないが、フルートとダブルリード?は頻度が高い。

 

こうした筋骨格系症状や消化器系症状がフルート奏者には多そうな結果です。

こうした症状は、演奏や日常生活に支障をきたしますが、フルート奏者の右手の親指サポーターをつけることで上肢症状が改善されたという報告があります(Ergonomics.2006 Feb 22;49(3):316-22.)。またフルートの正しい姿勢を行う教室を開くことも効果的とするものもあります(Behav Modif. 2007 Jul;31(4):382-8.)。

 

ただこれらだけでは、おそらく問題は解決しないだろうと思います。

演奏家の身体的ケアは、小さいころから積極的に行われないと、継続して演奏できる子供は減る可能性があります。

スポーツトレーナーのような職業は知られていますが、演奏家のトレーナーも認知度が高くなっていけば、治療をする人も増えていくかもしれません。