肝血管腫の自然経過
肝 血 管 腫 の 自然 経 過 に 関 す る検 討
及川 ルイ子 ・浅野 耕 司*・小野 良樹 ・阿部 真 弓
小川 眞広 ・山本 義信 ・荒川 泰行**
日消集検誌. 第35巻4号. 1997.7
肝血管腫は、肝臓の非上皮性良性腫瘍の中で最も頻度が高い(全肝腫瘍の76%を占める)。
血管腫の組織は、毛細血管腫と海綿状血管腫の2パターンが多く、海綿状血管腫の方が多い(肝臓 59 巻 3 号 187―193(2018))。
肝海綿状血管腫は、全人口の0.4-7.3%に認められる。
健康診断を受けた19028名のうち、肝血管腫がみつかった139名(男性70名、女性69名)
性差の発現頻度;男性0.53%、女性1.18%で有意に女性に多い
年齢別;男性は40歳代、女性は50歳代がピーク
肝血管腫の大きさ;2.0cm以下で75%程度を占める
3年間で2回の検査を受け、大きさに変化があったか?
97.1%は変化なし
2.9%は増大傾向を認めた
最大で4mmの増大があった。
この変化は、肝細胞がんとの鑑別点にもなる。
増大スピードが肝血管腫の方が緩慢であるということは特徴になる。
肝血管腫と似た悪性腫瘍で肝血管肉腫がある(肝臓 58 巻 2 号 115―122(2017))。
また、海綿状血管腫の内部に血栓や壊死、瘢痕形成、石灰化などを起こし、腫瘍組織が硬化する肝硬化性血管腫もある(日臨外会誌 77(1),128―134,2016)。
肝海綿状血管腫の多くは、無症状で経過観察で対応することが多い(腫瘍の大きさが4cmを超えると腹部不快感などが起こることがある)が、
感染症や破裂、腫瘍内出血、Kasabach ─ Merritt症候群などを合併した場合は治療対象となるので、注意が必要。
Kasabach ─ Merritt症候群とは、血管腫内で血栓が形成され、それにより血小板や凝固因子が消費され出血傾向を示すもの。
破裂では、突発性の心窩部痛や誘因なく起こる