脂肪腫について
左背部痛を訴える70代の男性が先日来院。
臥床時のみ痛む。
触診にて柔らかく可動性のある腫瘤らしきものがあった。
押さえても痛みは誘発されず。
脂肪腫かな?と思いながら病院受診を勧めた。
脂肪腫は軟部腫瘍に属し、
脂肪肉腫や滑膜肉腫などの悪性軟部腫瘍(軟部肉腫)に分けられる。
また良性と悪性の中間腫瘍もある。
良性は悪性に比べ発生頻度も高い。
全国骨・軟部腫瘍登録(2008年;3708例)では、良性70.4%・悪性29.6%だったとされる。
年齢・性差;
脂肪腫は40歳代から増加傾向、60歳代でピーク
男性にやや多い
発生部位;全国骨・軟部腫瘍登録(2015年;31168例)
良性軟部腫瘍では、
手・手関節:13.3%
大腿:12.5%
背部・腰部:10.2%
足・足関節:9.4%
肩・腋窩:9.3%
とされた。
しかし脂肪腫単独では、肩や背部が多い。
大きさ;
5cm以上では悪性の可能性が上がる。
悪性13647例のうち、5cm未満だったのは19%、5cm以上は81%だった。
問診のポイント;
発症の仕方:
いつ気付いた、どのように気付いた、大きさの変化は?
良性は大きくなるのに数年単位(悪性でも年単位はある)だが、悪性は月単位
突然もしくは数日で大きくなったならば、膿瘍や筋肉内出血などが考えられる。
疼痛の有無:
悪性骨腫瘍は痛みを伴うが、良性・悪性の軟部腫瘍では痛みは生じないことが多い。
疼痛発生しうるものとして、血管腫やグロムス腫などがある
触診のポイント;
皮下発生で柔らかい腫瘍は良性のことが多い。
悪性腫瘍は、表面平滑もしくは結節状で弾性硬が多い。
完全に鑑別するのは難しいので、参考程度。