自閉症への鍼はオキシトシンを介してセロトニンやドーパミンを増やす可能性がある
Acupuncture and oxytocinergic system: The promising treatment for autism
OT:オキシトシン; OTR:オキシトシン受容体; AEA:アナンダミド; NAc:側坐核; VTA:腹側被蓋野。
ASDの解明は完全ではないが、その過程では様々な神経系や神経伝達物質が関わることが報告されている。
その1つにオキシトシンがある。
オキシトシンは下垂体後葉から放出され、女性の子宮収縮や乳汁分泌に関わることで知られているが、その他にも体内のコルチコステロンやストレスレベルを下げたり、血圧低下などにも関わる。
近年、浜松医大より、オキシトシンをASDに注射することで、症状の改善が認められたとする報告もある。
オキシトシンと鍼;
鍼ないし鍼通電によりオキシトシンレベルが増加するという動物研究がある。
2HzのEAを30分行い、血漿と脳脊髄液中のオキシトシンレベルが上がった。(Acta Physiol Scand. 1993 Oct;149(2):199-204.)
10-20HzのEAで、ラットの視床下部のオキシトシンレベルが上がった。(Neuropeptides. 2007 Oct;41(5):285-92.)
など。
ASDには、オキシトシン以外にもセロトニンやドーパミンも関与することが知られている。
動物研究では、オキシトシンがセロトニン作動性神経やドーパミン作動性神経に作用し、社会的行動を変化させるとされる(CNS Neurosci Ther. 2010 Jun;16(3):e92-123.)。
腎兪(BL23)や足三里(ST36)などの鍼刺激で、ドーパミンやセロトニンが増加するとした動物研究もある
これらの反応は、直接ドーパミン作動性などに影響したか、間接的にオキシトシンを介して増加した可能性がある。
近年、鼻腔内にオキシトシンを噴霧する治療法があるが、副作用として眠気や鼻の炎症、立ち眩み、頭痛などがおこることがあるとされる。
またこの治療法は確立されたものではなく、サンプルサイズも小さく再現性も低いとする報告もある。
鍼治療による臨床研究が待たれるが、副作用という面で見れば鍼の方が安全性は高いのではないかと予測される。