外傷性肩関節脱臼後の神経障害の発生率
本日は、肩関節脱臼後の神経障害について。
Tiefenboeck TM, et al. Incidence, diagnostics and treatment algorithm of nerve lesions shoulder dislocations: a retrospective multicenter study. Arch Orthop Trauma Surg. 2020 Jan 24. doi: 10.1007/s00402-020-03348-z.
外傷性肩関節脱臼後の神経病変の発生率、診断と治療アルゴリズム:前向き多施設共同研究
肩関節は、人体で最も脱臼しやすい関節で、すべての脱臼の45%を占める。
肩関節の脱臼発生率;10万人中40.4人
脱臼により、軟部組織の損傷や骨損傷に加え、血管や神経(上腕神経叢など)も障害される可能性がある。
先行研究での、神経障害の発生率は21-65%とかなり幅がある。
こうした神経障害の割合などを検討する目的で、ウィーンの3つのセンターでの共同研究を前向き研究として行った。
対象は15.739名が集まり、下記の診断と治療のアルゴリズムに沿って診断された結果、
最終的に60名が肩関節脱臼および神経障害が認められた。
発生率は0.4%.
60名の内訳;
平均年齢60歳(19-88歳)
男性32名、女性28名
70歳以上の女性が70%を占めた。
神経病変を呈した80%が52歳以上。
傷害パターン;
転倒時に腕をのばして倒れた;85%
乗馬中1名、スキー4名、椅子からの転落3名、サッカー3名など
骨転位のパターン;
上腕骨頭が、
前方脱臼;67%
尾側脱臼;17%
後方脱臼;3%
骨転位と神経障害に関連性はなし。
神経病変;
76.6%が腕神経叢病変を合併
23.3%が末梢神経損傷
運動障害;58.3%
感覚障害;86.6%
運動・感覚障害;51.6%
患者の多くは、肩関節整復後のリハビリを行っても残存した。
これは、先行研究とは異なる結果(先行研究の多くは予後良好だが、今回は運動障害や感覚障害が残った)。
肩関節の脱臼は、コンタクトスポーツや転倒で起こることが多いが、神経障害の合併率は思ったよりも高い結果でした。
また、残存率も高く、既存の方法ではそこまでの回復率はないのかもしれません。
今回の治療法に鍼灸は含まれていませんが、加えるとどうなるでしょうか?