膝の痛みと脂肪の関係
本日は、膝蓋下脂肪と膝前面部痛についてです。
Biomed Res Int. 2019 Mar 31;2019:6390182. doi: 10.1155/2019/6390182. eCollection 2019.
Contribution of Infrapatellar Fat Pad and Synovial Membrane to Knee Osteoarthritis Pain.
Belluzzi E1, Stocco E2,3, Pozzuoli A1, Granzotto M4, Porzionato A2,3, Vettor R4, De Caro R2,3, Ruggieri P5, Ramonda R6, Rossato M4, Favero M6, Macchi V2,3.
小野哲矢、他.膝蓋下脂肪体の組織弾性が膝前部痛に与える影響.東海スポーツ傷害研究会会誌:Vol.31(Nov.2013)
変形性膝関節症やOsgood-Schlatter 病、有痛性分裂膝蓋骨といった膝の痛みに関して、筋肉や骨を刺激して、十分な張力や変形の緩和が図れたとしても、膝前面部の痛みが残存するケースがあります。
また、変形性膝関節症では、同程度の変形があっても、痛みのあるケースとないケースがあります。
これは、局所の炎症以外に、末梢及び中枢性の感作が示唆されています。
その感作に影響を及ぼすものとして、膝蓋下脂肪( infrapatellar fat pad:IFP)の関与が最近の研究で報告されつつあります。
膝には、いくつか脂肪が解剖学的に観察されています。
その中でも、IFPが近年注目度が高まっているようです。
pt;膝蓋腱、p;膝蓋骨、IFP;膝蓋下脂肪、t;脛骨
IFPには、血管が多く存在しており、特に膝蓋腱外側縁の後方には、2つの血管があり、いくつかの血管と吻合しているようです。これにより、前十字靭帯の損傷時の血液供給の役割なども担っていることが推測されているようです。
また神経支配としても、脛骨神経の枝が有力視されているようです。
こうした解剖知識は、まだ不十分ではありますが、
変形性膝関節症患者さんの痛みの推移をみると、
(1)鈍く、痛みを伴う痛み。
(2)強度が異なる断続的な痛み。
の2パターンが多く、経過中に変化することもあります。
こうした関与にもIFPの関与が考えられるとのこと。
例えば、
痛みの進行はOAの初期段階では活動誘発性の断続的ですが、中期段階では頻繁で断続的であり、日常生活の活動を妨げる絶え間ない痛みに進行します。最後に、進行したOAは、激しい断続的な一定の鈍い/痛みになります。
鍼灸施術を行う際に、外膝眼穴などに鍼を行いますが、血管や神経の解剖を頭にイメージしながら、膝蓋下脂肪の刺激を行うことで、膝前面部痛の緩和に作用することが示唆されます。
もう少し詳細な報告が必要ですが、脂肪が膝の痛みに関与するというのは忘れずに観察することが必要です。