都城鍼灸ジャーナル

宮崎県都城市で鍼灸師をしている岩元英輔(はりきゅうマッサージReLife)です。読んだ論文を記録するためのブログです。当院のホームページ https://www.relife2019.jp/index.html しんきゅうコンパス https://www.shinq-compass.jp/salon/detail/33749

肩甲背神経の走行タイプ;日本人の検討

Observational Study
 
2018 Nov;97(47):e13349.
 doi: 10.1097/MD.0000000000013349.

Anatomical variants of dorsal scapular nerve in relation to the middle scalene muscle in Japanese population

 
肩甲背神経(DSN)は、脊髄神経の前枝に属します。
通常、前枝は、体の前面の筋肉を支配しますが、DSNは、C5・C4頚神経から中斜角筋(MSM)を貫通し、菱形筋と肩甲挙筋、小円筋を神経支配する3つのタイプに分かれます。
 
首の痛みの原因の1つは、MSMがDSNを絞扼することで起こるという報告もあります。
 
しかしこのDSNは、大きく3通りのパターンがあるとされています。
1.MSMを貫通するパターン⇒ピアシング
2.MSMの前方を通過するパターン⇒Anterior
3.MSMの後方を通過するパターン⇒Posterior
2と3のパターンでは、DSNがより表層へ露出されるようになり、鍼やブロック注射では神経損傷のリスクが上がります。
 
この3パターンを詳細な調査が必要で、日本人の70名の遺体解剖で行っったそう。
 
An external file that holds a picture, illustration, etc.
Object name is medi-97-e13349-g002.jpg
 
日本人では、ピアシングパターン(68%)と前方移動パターン(32%)が確認された。後方移動パターンは確認されず。
両側ともにピアシングパターン:60%
両側ともに前方移動パターン:24%~やや女性に多い傾向
左右で異なるパターン:16%~左は前方移動、右はピアシングのパターンは女性のみ(4%)
 
ピアシングパターンの経路;
C4-C5頚神経から、MSMの腹側から背側に向かって貫通
 
写真やイラストなどを保持する外部ファイル。オブジェクト名はmedi-97-e13349-g003.jpgです。
MSM周辺のピアシングタイプのDSNパスの写真と概略図。A、95歳の男性のホルムアルデヒドで固定された右首の前外側の図(死因:老人性; No.1938)。B、同じビューのグラフィック概略図。MSMをピアシングするピアシングタイプのDSNパスが識別されます。黒と白の矢印はDSNを指しています。ASM =前斜角筋、DSN =肩甲背神経、LTN =長胸神経、MSM =中斜角筋、UT =上部体幹、v。サブ=鎖骨下静脈。
 
Anteriorパターンの走行経路;
MAMの真正面を通過する
写真やイラストなどを保持する外部ファイル。オブジェクト名はmedi-97-e13349-g004.jpgです。
MSM周辺の前方型DSNパスの写真と概略図。A、86歳の女性のホルムアルデヒドで固定された右首の前外側の図(死因:胃腸出血; No.1838)。B、同じビューの概略図。前方タイプのDSNパスは、MSMの前で実行されているのがわかります。黒と白の矢印はDSNを指しています。ASM =前斜角筋、DSN =肩甲背神経、LTN =長胸神経、MSM =中斜角筋、MT =中斜角筋、PT =後斜角筋、UT =上体幹、v。サブ=鎖骨下静脈。
 
先行研究のアメリカ人のDSNパターンと比べ、今回の日本人の結果は、前方移動パターンが日本人に多い傾向がある。
 
われわれが、MSMからDSNへ向けて、鍼刺激を行う際には、こうしたことを考慮することが必要で、必ず左右差を確認することが必要です。つい忘れて片方だけということも恥ずかしながら経験があります。
 
確認には、MSMの筋腹を垂直圧迫し、神経がないか?肩甲骨間に放散がないか?などを確認することが必要で、不明瞭な場合は、鍼ではなくお灸を選択することになります。

MSM上の施灸で前方移動パターンだったとしても熱放散で効果があります。