好酸球性血管性浮腫症例への鍼
掻痒感の軽減に鍼治療が有効であった好酸球性血管性浮腫の1症 例
松本 淳a 江 川 雅人b 福 井和 佳子c山村 義 治d 矢野 忠a
日東 医誌 Kampo Med vol. 56No. 344-452, 2005
好酸球性血管性浮腫(EAE)は、まれな疾患で20-30歳の女性に運動後などに起こる、蕁麻疹や限局性浮腫、発熱、体重減少、関節痛を繰り返すもの。
一方、Nonepisodic angioedema with eosinophilia(NEAE)はEAEよりも頻度が高く、夏-秋にかけて四肢に限局した浮腫(無痛性)が発症するもので、繰り返しもない。
NEAEに対する鍼治療の報告例はこれまでなかったよう。
症例は25歳、女性。
主訴は皮膚掻痒感
四肢の浮腫や体幹の紅斑などがあった。
NEAEと診断され、抗アレルギー薬が処方されるも効果なし。
鍼治療を行うことで、少しずつ寛解していったとのこと。
鍼治療の方法;
治 則: 滋 陰清 熱 ・疏 肝 理 気 (平 肝 潜 陽)・ 去 風配 穴: 左 照 海(補 法), 百 会 (潟 法) を 中 心 に 曲池, 三 焦愈, 合 谷, 神 門 な どを適 宜 配 穴 した。
使 用 鍼 は, ス テ ン レス製 デ ィス ポ ーザ ブル 鍼(セイ リン株 式 会社 製) と し, 1, 2診 は40mm16号 (直径0.16mm), 3診 以 降 は30mm14号 (直径0.14mm)を用 い た。
刺 鍼 法 は, 1, 2診 は5~10mm程 度 の直 刺 に よる鍼 響 後 に10分 間 の置 鍼 術 と し, 3診 以 降は, 1~2mm程 度 の切 皮 横 刺 に て置 鍼 術10分 と した 。補 法 は経 穴 の軟 弱 部 に置 鍼 を行 い, 潟 法 は経 穴の 緊 張部 へ の置 鍼 を行 っ た。
皮膚掻痒感と好酸球数には相関関係があり、鍼により好酸球数が減少することが報告されている。
今回の症例では、鍼によるものかは断定できないが、局所の刺激だけでなく全身的な刺激の方が効果は高いよう。
一時的に掻痒感や紅斑が強くなったこともあったようなので、患者さんにはその可能性も含めて最初に十分な説明をしておく方がよいだろうと思われます。今回の症例では3回目以降はなかったとのこと。