リンパ浮腫の体液と脂肪浮腫について

本日は、リンパ浮腫と脂肪の関係について。

あまり浮腫についての報告では、脂肪について論じられることは少ないように思いますが、浮腫と脂肪の関係は確かにあります。

脂肪浮腫という表現でされますが、その関係性をMRAを用いて検討した報告です。

Joseph D, et al. Regional Pattern of Fluid nd Fat Accumulation in Patients with Lower Extremity Lymphedema Using Magnetic Resonance Angiofraphy. Plast Reconstr Surg.2020 Feb;145(2):555-563.

磁気共鳴血管造影を用いた下肢リンパ浮腫患者における体液および脂肪蓄積の局所パターン

何らかの理由によるリンパ機能の障害やリンパ液のうっ滞は、やがて慢性炎症を起こし、コラーゲンの沈着と脂肪細胞の蓄積を起こす。

しかし現在のリンパ浮腫の病期分類には、脂肪蓄積に関することはない。

脂肪と体液の分布は、予後に影響を起こす可能性がある。

そこで、磁気共鳴血管造影を使った下肢リンパ浮腫患者の体液と脂肪分布を測定した。

対象は、下肢の原発性もしくは続発性リンパ浮腫患者76名(女性63名・男性13名)。

患者背景

特性	値（％）
症例数	76
年齢、年
平均	51
範囲	12–73
性別
女性	63（83）
男性	13（17）
BMI、kg / m ²
平均	26
範囲	17–42
放射線治療の経験
あり	31（41）
なし	45（59）
リンパ浮腫の期間、mo
平均	125
範囲	3–348
ISLステージ
1	8（11）
2	65（86）
3	3（4）

国際リンパ学会：ISLの病期分類

0 =無症状のリンパ浮腫（四肢の腫脹の証拠のないリンパ機能障害)

1 =軽度のリンパ浮腫（軽度だが目に見える四肢の腫脹が一時的に下肢挙上で改善）

2 =中程度のリンパ浮腫（中等度の四肢の腫脹と、隆起によって改善しないPitting浮腫と関連する可能性のある線維症の証拠）

3 =象皮症（重度の線維症、角質増殖、およびしばしば象皮の変化を伴う重度の四肢の腫脹）

症例のリンパ浮腫の原因；悪性腫瘍のなかで婦人科系癌が約4割

体液の評価

体液蓄積グレードのスコア

0=体液なし

1 =皮下脂肪内の体液のハニカム/網状パターン

2 =脂肪と投資筋筋膜との間の体液の連続的な縞模様。

脂肪蓄積のスコア

0=過剰な脂肪なし

1 =影響を受けない側の最も幅の広い脂肪ストライプの幅の2倍未満の脂肪蓄積

2 =幅の広い脂肪ストライプの幅の2倍より大きい脂肪蓄積影響を受けない側

体液と脂肪蓄積なし；

体液1・脂肪0；

f:id:ararepyon:20200207105041p:plain

体液2・脂肪0；

リンパステージ2・体液2・脂肪1；

リンパステージ2・体液1・脂肪2；

体液2・脂肪2；

体液と脂肪の分布；下腿に多く分布する。大腿部では内側に脂肪の蓄積が多い

分布パターン	部位			合計
分布パターン	横（％）	内側（％）	全体（％）	合計
脂肪
大腿	2（11）	13（72）	3（17）	18
下腿	3（7）	17（40）	23（53）	43
どちらも	0（0）	5（33）	10（67）	15
流体
大腿	5（42）	3（25）	4（33）	12
下腿	34（58）	7（12）	18（30）	59
どちらも	3（60）	0（0）	2（40）	5

ISL分類のグレードと体液ステージの関係；有意な関連性はなし

ISL分類のグレードと脂肪スコアの関係；有意な関係性あり

ステージ1の患者の脂肪グレードが2であったのは、ステージ1の患者の12.5％のみ

ステージ2の患者の約半分は脂肪のグレード2

ステージ3の患者の100％は脂肪のグレード2

だった。

評価者の一致率；一致率は高い

変数	合意（％）	Light'sκ（95％CI）
全体的な支配	91.5	0.90（0.78–0.98）
脂肪の場所	91.5	0.89（0.75–0.97）
脂肪グレード	87.2	0.86（0.70–0.95）
体液の場所	91.5	0.78（0.46–0.95）
体液グレード	95.7	0.95（0.83–1.00）