心疾患による腕の痛み
本日は、上肢への関連痛に関する報告です。
岡崎大武、他. 上肢の症状を呈する虚血性心疾患. Spinal Surgery.2018;32(2):130-133.
虚血性心疾患は、急性冠症候群・異型狭心症・急性心筋梗塞・不安定狭心症・安定狭心症などで狭心痛が生じる。
狭心痛は心筋虚血によって生じる疼痛を指し、前胸部の圧迫感・絞扼感のほか、上肢の疼痛・下顎・頚部・肩痛などへの放散痛も生じる。これらは、心疾患が原因であることから関連痛と呼ばれる。
狭心痛と関連痛のメカニズム
心臓の知覚は交感神経が主な役割で、心筋細胞がにその終末がある。これが刺激されると、星状神経節などがある頚部の交感神経節を経由し、第1-4胸髄後根(人によっては、第8頚髄-第9胸髄まで拡がる)から脊髄灰白質に終わる。その後は中継ニューロンにより対側大脳皮質の感覚野に投射され狭心痛を自覚する。この過程で、末梢受容野の皮膚情報や筋肉情報が紛れ込み、大脳に痛みや筋肉の痛みとして伝達されてしまう。
また、詳細は省くが、心筋と心膜では伝達経路が異なる。心膜は横隔膜が疼痛を感知する。
そのため、
心筋由来の関連痛は、胸部・背部・上肢内側へ
心膜由来の関連痛は、頚部・顎部・肩部へ
発生すると考えられる。
しかし、実際の臨床では、これらは混ざり合って発生することが多いので、さらなる解明が必要。
ある報告では、胸痛と同時に腕の症状は、約46%に発生するとされている。
この他、呼吸困難(49%)・発汗(35%)・嘔吐(33%)がある。
典型例は、左肩から左上肢にかけての放散痛だが、右肩から右上肢・両肩から両上肢・下顎や頚部にも起こりうるため、気を抜かない。ごくまれに下肢に関連痛が発生した報告もあるとのこと。
鑑別には頚椎症が挙がる
冠動脈疾患患者の94%は、関連痛と同時に胸部症状(疼痛・圧迫感・重圧感・違和感など)が発生しているとされる。
そのため、問診では、腕の痛みに胸部症状がないかを詳細に確認することが求められると思います。