乳がんの補完代替医療について
本日は、乳がんに対する補完代替医療のシステマチックレビューです。
佐々木裕伊、他. 乳がん患者への補完代替医療:システマチックレビューを用いたオーバービュー. Yakugaku Zasshi.2019;139:1027-46.
日本におけるがん統計では、女性の乳がん罹患数は89000人、これはがん全体の438000人の約20%を占める。
がんを患った方が、補完代替医療を利用する割合は44.6%と高い割合が報告されている。
別のアンケート結果では、
健康食品・サプリメント
運動
マッサージ
温泉
気功
鍼
灸
などが行われているようだ。
しかし、医師のこれらに対する知識は不十分とされた。
今回、これらの補完代替医療の効果を、最新のシステマテックレビューをさらにレビューするオーバービューを行いエビデンスレベルを検討。
対象は、最終的に34編の文献が残った。
このうち、
ヨガ9編
鍼6編
生薬5編
太極拳3編
などで19編がメタ解析は19編(ヨガ・鍼・処方製薬・マッサージ・太極拳・マインドフルネスストレス低減法・緑茶)行った。
その結果、
1.鍼治療におけるほてりの頻度は肯定的→日本乳癌診療ガイドラインでは、グレードC(専門家の判断と患者の選択に基づき、個々の患者に選択的に提案・提供される推奨であり、少なくとも低い利益を中程度確信できる)
2.処方製薬におけるQOL・再発率・生存期間・白血球数・吐き気・嘔吐・上肢の浮腫に肯定的
3.マッサージにおける痛み・不安に対してエビデンス不十分だが、怒り・疲労には小程度のエビデンスあり→ガイドラインでは、うつ・気分障害にグレードB、不安・ストレス減少にグレードC
4.マインドフルネスストレス低減法におけるうつ・不安は肯定的→グレードA(瞑想に分類)
5.太極拳におけるQOLは、エビデンス不十分→ガイドラインではQOLにグレードC
6.ヨガにおけるうつ・不安・健康関連QOLは肯定的→ガイドラインではグレードB
目的別に何を選択すべきかは、患者さんと相談しながら行うのが望ましいのだと思います。
鍼治療におけるほてりに有用性がありましたが、このほてりは「頻度」なのか「程度」なのかがいまいちはっきりしませんでした。
おそらく「頻度」なのだと思います。
オーバービューという最近はこうした手法での報告が増えてきました。
鍼灸もその他の代替医療も、このままでは流れに取り残されていくと思います。
今までとは違った方法で、鍼灸の有用性を検証することもそろそろ本気で考えないといけないかもしれません。