ベル麻痺に対する鍼治療の報告
今回は、顔面神経麻痺の中のベル麻痺についての報告だ。
Efficacy of acupuncture for Bell’s palsy: A systematic review and meta-analysis if randomized controlled trials
PLoS ONE.2015 May 14; 10(5): e0121880. Doi:10.1371/journal.pone.0121880
ベル麻痺に対する鍼治療の有効性:無作為化対照試験の系統的レビューとメタ解析
最終的に14編のRCT(n=1541)が厳選され、メタ解析した。
その結果、
鍼治療による有効奏効率は有意に高い(相対リスク=1.14(1.04-1.25)、P=0.005)
しかし、異質性も認められた(I2=87%)。
合併症の発生率は、解析不可。
結論
これより、ベル麻痺に対して鍼治療は効果的な治療法になりそうだが、現在はその有効性と安全性に対する証拠とはいえない。
Compare the efficacy of acupuncture with drugs in the treatment of Bell’s palsy: A systematic review and meta-analysis of RCTs.
Medicine. 2019 May 1; 98(19):e15566. doi: 10.1097/MD.0000000000015566.
ベル麻痺の治療における鍼治療と薬物療法の有効性の比較:RCTの系統的レビューとメタ解析
鍼治療と薬物治療がベル麻痺に有効かを比較検討した報告を集積し、最終的に11編(n=1258)が厳選された。
その結果、
鍼治療は治癒率の増加[RR=1.77(1.41-2.21)]が認められたが、異質性も認めた(I=67%、P=0.0008)。
総有効率では、鍼治療に有意差が認められた[RR=1.18(1.07-1.31)]。しかし、異質性も認めた(I=90%、P<0.00001)。
安全性に関しては十分な報告がなく、解析できず。
今回は、ベル麻痺に関する鍼治療の2つのシステマティックレビューを読んだが、いずれも異質性があり、鍼治療が有効とする証拠とするには不十分な結果であると結論づけている。
鍼治療自体には、ベル麻痺を改善する効果がありそうだが、研究の質が低いため、証拠能力が弱いとされるのは、もったいない。
メタ解析をするのであれば、鍼治療の方法別に解析をすると異質性が少しはなくなっていくと思うのだが、鍼通電療法も手動鍼もまとめて解析をすると異質性がでてきてしまう。
最初のメタ解析の図をみると、
Yang 2001 1.00(0.94-1.07)
Zhu2004 1.36(0.86-2.14)
Li2005 RR=1.00(0.96-1.04)
Zhao2005 RR=1.10(0.72-1.69)
Dai 2009 RR=1.26(1.03-1.55)
が鍼通電療法を行った報告
Ma2004 RR=1.56(1.20-2.03)
Shao1999 RR=1.14(1.02-1.28)
Tong2009 RR=0.91(0.77-1.09)
Wang2007 RR=1.23(0.96-1.57)
Yang2006 RR=1.08(1.02-1.15)
Yu1999 RR=1.80(1.21-2.66)
Zhu2006 RR=1.06(0.96-1.17)
が手動鍼治療の結果で、
解析はしていないが、見比べると
鍼通電療法よりも手動鍼治療の方が良好な結果をだしているようにみえる。
これからまだまだ報告の積み重ねが必要だ。