肩手症候群に対する鍼治療
Acupuncture for post-stroke shoulder-hand syndrome: A systematic review and meta-analysis.
Front Neurol.2019 Apr 26;10:433. Doi: 10.3389/fneur.2019.00433.
脳卒中後の肩手症候群に対する鍼治療:系統的レビューとメタ解析
肩手症候群(SHS)は、脳卒中患者の12-49%に併発する症状で、痛み・痛覚過敏・関節の腫脹・可動域制限が起こる。
SHSは、CRPSⅠ型(複合型局所疼痛症候群Ⅰ型)の中に分類され、反射性交感神経性ジストロフィーもある。
脳卒中後の運動機能の回復に関して、2010年以前のレビュー3件では、鍼治療は改善しないとされていた。
しかし、近年のレビュー2件では、以前のものと反して回復させることが報告されている。
SHSに関しては、3件のレビューがあり、これらに鍼通電療法は含まれていなかった。
今回は、鍼通電療法も含むSHSに関するレビューを行った。
リハビリテーションに鍼治療ないし鍼通電療法を併用したRCTか準RCTを集積し、耳鍼や空中鍼は除外。
評価:VAS・NRSの疼痛評価、Fugl-Meyer評価(FMA)の上肢機能評価、Barthel index(BI)、ROM、有害事象
サブグループ解析:手動鍼治療と鍼通電療法を分けて解析
結果
38件(n=3184)の報告が最終的に厳選された。
メタ解析を行った結果、
リハ+鍼 vs リハ
FMA(34件)~MD=8.01(6.69-9.33)、p<0.00001、I²=78%、Fig3
VAS(25件)~MD=-1.59(-1.86—1.32)、p<0.00001、I²=87%、Fig4
ADL(11件)~MD=9.99(5.91-14.06)、Table3
ROM(3件)~MD=11.94(9.44-14.45)、Table3
と鍼治療併用による有効性が示されたが、これらの結果は、いずれも証拠能力は低いと判定された。
サブグループ解析
鍼刺激の種類と治療期間における分析では、すべてリハ単独と比べ有意な追加効果を示した。
有害事象
詳細な報告が欠如していたため、安全性は不明確
結論
鍼治療は、SHSの疼痛や運動機能などをリハと併用することで有効と考えられる。ただし、確実性は低いため、更なる検討が必要
今回の報告は脳卒中後の肩手症候群に対する鍼治療の有効性に関するレビューであった。
根拠としては弱いながらも有効性は示された。
しかし、準RCTも含めての解析であり、バイアスのリスクが高い報告もある。
サブグループ解析で、治療法と治療期間の解析を行っているが、鍼通電療法の方が効果は大きいようにみえるが、検討されていない。
また4週間以内と以上とでは、治療効果に差はないため、まずは4週間行い、効果判定を行うのがいいかもしれない。
肩手症候群のグレード別があっても良かったと思う。少なくともグレードⅠだけに絞った解析があれば、より上質なものになったかもしれない。
いまだ原因不明の肩手症候群だが、薬剤やリハのみでは対処が困難なケースがあり、そんな時には鍼治療を行うのも一考かというレベルにはなってきた。