四辺形間隙症候群:Quadrilateral space
Quadrilateral space syndrome: The forgotten differential
Quadrilateral space syndrome(QLSS);四辺形間隙症候群
上腕骨・大円筋・小円筋・上腕三頭筋長頭で構成される四辺形の間隙を、
腋窩神経・後上腕回旋動脈(PCA)が通過し、この部位の障害により、
肩関節側面~後面の疼痛や上腕の痺れなどが起こる。
好発年齢は20-40歳代
バスケットや野球などの運動はリスク因子
利き手に多い
可動域制限はないこともあるが、挙上で増悪・夜間増悪が多い
鑑別疾患として、
頚部神経根症(C5/C6)⇒腋窩神経
腕神経叢障害
など
今年の症例報告では、エコーが有用かもしれないとされている。
Musculoskeletal ultrasound diagnosis of quadrilateral space syndrome: A case report
治療は、NSAIDや安静が基本らしい。
難治性では、除圧術が行われることもある。
長いあいだ、痛みや痺れで悩んでいる方の原因はこれかもしれないので、
忘れないようにする。
またその場合の相談があった場合、鍼灸で出来ることは?
Baker嚢腫による腓骨神経麻痺
症例;50歳、男性
誘因なく、左下腿の腫脹と左足関節の背屈不可
診察時に左膝窩部に腫脹、左腓骨神経領域の知覚鈍麻・前脛骨筋と長母趾伸筋の筋力低下を認めた。
Baker嚢腫による腓骨神経麻痺とされた。
Baker嚢腫の多くは、腓腹筋-半膜様筋滑液包が、変形性関節症や関節リウマチなどの合併で起こる。
通常は無症状だが、外側へ腫大すると膝窩動脈の圧迫から下肢の痺れや跛行、膝窩静脈の圧迫から下肢の腫脹やしびれ、脛骨神経の圧迫による下腿の痺れが出現することがある。
さらに外側へ腫大すると腓骨神経障害が加わる。
そのため、脛骨神経症状を伴わない腓骨神経症状は極めてまれ(過去に数例の報告があるよう)。
この場合、神経障害を起こしている嚢腫を取り除くことが必要となるとのこと。
肝血管腫の自然経過
肝 血 管 腫 の 自然 経 過 に 関 す る検 討
及川 ルイ子 ・浅野 耕 司*・小野 良樹 ・阿部 真 弓
小川 眞広 ・山本 義信 ・荒川 泰行**
日消集検誌. 第35巻4号. 1997.7
肝血管腫は、肝臓の非上皮性良性腫瘍の中で最も頻度が高い(全肝腫瘍の76%を占める)。
血管腫の組織は、毛細血管腫と海綿状血管腫の2パターンが多く、海綿状血管腫の方が多い(肝臓 59 巻 3 号 187―193(2018))。
肝海綿状血管腫は、全人口の0.4-7.3%に認められる。
健康診断を受けた19028名のうち、肝血管腫がみつかった139名(男性70名、女性69名)
性差の発現頻度;男性0.53%、女性1.18%で有意に女性に多い
年齢別;男性は40歳代、女性は50歳代がピーク
肝血管腫の大きさ;2.0cm以下で75%程度を占める
3年間で2回の検査を受け、大きさに変化があったか?
97.1%は変化なし
2.9%は増大傾向を認めた
最大で4mmの増大があった。
この変化は、肝細胞がんとの鑑別点にもなる。
増大スピードが肝血管腫の方が緩慢であるということは特徴になる。
肝血管腫と似た悪性腫瘍で肝血管肉腫がある(肝臓 58 巻 2 号 115―122(2017))。
また、海綿状血管腫の内部に血栓や壊死、瘢痕形成、石灰化などを起こし、腫瘍組織が硬化する肝硬化性血管腫もある(日臨外会誌 77(1),128―134,2016)。
肝海綿状血管腫の多くは、無症状で経過観察で対応することが多い(腫瘍の大きさが4cmを超えると腹部不快感などが起こることがある)が、
感染症や破裂、腫瘍内出血、Kasabach ─ Merritt症候群などを合併した場合は治療対象となるので、注意が必要。
Kasabach ─ Merritt症候群とは、血管腫内で血栓が形成され、それにより血小板や凝固因子が消費され出血傾向を示すもの。
破裂では、突発性の心窩部痛や誘因なく起こる