都城鍼灸ジャーナル

宮崎県都城市で鍼灸師をしている岩元英輔(はりきゅうマッサージReLife)です。読んだ論文を記録するためのブログです。当院のホームページ https://www.relife2019.jp/index.html しんきゅうコンパス https://www.shinq-compass.jp/salon/detail/33749

スポーツ貧血について

貧血は、

男性;Hb13.0ℊ/dl

女性;Hb12.0ℊ/dl

妊婦や高齢者;11.0g/dl

がおおよその判定基準。

しかし、喫煙者・運動選手などは高めに設定される。

 

病歴として(Br Med J1969 Aug 23;3(5668):436-9.)

ヘモグロビン減少による酸素運搬能の低下に伴う倦怠感・易疲労感、進行すると労作時の息切れ(呼吸困難)や起立性低血圧の症状(めまいや失神)が出現する。

経過が慢性的な起立性低血圧は貧血とは関係ないことが多い。

ヘモグロビン低下の数値と自覚症状は必ずしも比例しないが、顔面蒼白は重症化の指標となる。

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こうしたことから貧血が疑われた場合、

病院検査における最初のステップは白血球や血小板の異常がないか?を確認すること。

これにより、例えば貧血+2系統以上の血球減少があれば骨髄不全や白血病、骨髄の異常などが想定されるため。

白血球や血小板に問題がなければ、

骨髄機能に異常がないか?を網赤血球数が増加していないか?で判断する。

網赤血球は、赤芽球から核が失われた若い赤血球で、骨髄の造血能を示す指標となる。

ここも問題がなければ、

平均赤血球容積(MCV)による貧血を鑑別する。同時に赤血球容積粒度分布幅(RDW)も参考となる。

MCV80<~小球性貧血;鉄欠乏性貧血・慢性疾患に伴う貧血・サラセミア・鉄芽球性貧血・鉛中毒・スポーツ貧血

MCV=80-100~正球性貧血;出血性貧血・溶血性貧血・骨髄低形成・再生不良性貧血・慢性疾患に伴う貧血・腎性貧血・肝疾患・白血病・骨髄異型性症候群・多発性骨髄腫・甲状腺機能低下症・低栄養・銅欠乏性貧血・亜鉛欠乏性貧血など

MCV>100~大球性貧血;巨赤芽球性貧血(VtB12欠乏や葉酸欠乏)・肝疾患・アルコール依存・甲状腺機能低下症・銅欠乏性貧血・網赤血球増加・白血病再生不良性貧血抗がん剤使用など

 

小球性貧血の中で最も多いのは、鉄欠乏性貧血>慢性疾患に伴う貧血>サラセミアだが、アスリートではスポーツ貧血は重要な問題。

 

スポーツ貧血とは、

アスリートにおける偽性貧血を指す。

ときどき鉄欠乏性貧血と同じとされているものもありますが、誤解です。

長距離走やバスケットなどのトレーニングを重ねると、筋組織への酸素運搬能を高めるために、赤血球は増加し、体は循環血漿量を増加させる。

すると、見かけ上はヘモグロビンや血清鉄の濃度が希釈されて、数値が低下する。

しかし造血能は低下していないので、偽性貧血となる。

健康で偏食もない若年アスリートに鉄欠乏性貧血を認めたら、スポーツ貧血を疑う。しかし真の鉄欠乏性貧血とスポーツ貧血を鑑別するのは難しく、トレーニング前の状態の血液検査を行っておくと有益な情報となる(Ther Umsch1998 Apr;55(4):251-5.)

 

予防や治療として、鉄分の補給がありますが、サプリメントの過剰摂取による体内の蓄積で肝硬変や糖尿病のリスクとなることがあるので、定期的な血液検査をしながら摂取をする指導を忘れない。