摂食障害の合併症
本日は、摂食障害の合併症についての報告です。
佐藤康弘、他.摂食障害の合併症状.Jpn J Psychosom Med.2020;60:26-3..
摂食障害(eating disorder: ED)には、
神経性やせ症(anorexia nervosa:AN)~若年女性に多い。死亡率が高い。低体重。
ANはさらに、
制限型~やせ願望・肥満恐怖から食事制限と過活動を行う。
過食排出型~食事制限が継続できず、過食となる。しかし体重増加を防ぐために代償的自己誘発嘔吐や下剤利尿剤の乱用を行う。
神経性過食症(bulimia nervosa:BN)~食事制限や過活動、過食排出はあるが、体重は適正範囲。
が代表的。
http://www.edportal.jp/sp/about_01.htmlより
近年、DSM-5より、
回避制限性食物摂取症が追記された。
食物の味や性質からくる不快感、食物摂取に関連した腹痛や嘔吐などを恐れて食事摂取量が減少し、低体重となる。やせ願望などはない。
これらのED患者にみられる合併症
http://www.edportal.jp/sp/about_01.htmlより
循環器疾患
洞性徐脈~脱水があると頻脈になることあり
低血圧~循環血液量の減少
立ち眩み・失神~起立性調節障害から。転倒転落や事故につながる恐れあり。
左室心筋量の減少・駆出率の低下・僧帽弁逸脱症・心嚢液貯留などもある。
これらは、過食排出行為でさらに危険性が増す。
血液疾患
AN患者では、
正球性正色素性貧血~脱水による血液濃縮の影響
白血球減少~とくに好中球減少で細菌感染を起こしやすい
リンパ球は増加~ウイルス感染は起きにくい
血小板減少~紫斑・播種性血管内凝固症候群の危険性あり。
消化器疾患
機能性消化管障害
機能性嚥下障害~咽喉頭から食道にかけて
機能性胸やけ~咽喉頭から食道にかけて
便秘~過敏性腸症候群が多いとされるが、タイプは定かではない
上腸間膜動脈症候群~やせにより、腸管が動脈に挟まれ、通過障害。食思不振・腹痛・食後飽満間・腹部膨満・悪心・嘔吐。
AST・ALT上昇~飢餓によるオートファジー。悪化すると肝不全。
コリンエステラーゼ値は低下
消化器症状は、体重増加で良くなることが多いが、摂食障害患者さんにどうやって食べてもらうように説明するかは難しそう(私見)
内分泌・代謝疾患
女性は、脂肪織内でテストステロンからエストロゲンに転換される。しかし低体重で脂肪織減少すると女性ホルモンが産生されず月経停止から不妊につながる。
低体重患者では、成長ホルモンは増加するが、成長期に低体重になると身長増加は停滞しやすい。
患者さんの多くは、低体重は望むが、低身長は望んではいない。これが治療の動機付けになる。
骨粗鬆症~カルシウム・リン・ビタミンDの摂取不足。体重が回復しても持続するので注意が必要。
低たんぱく・低アルブミン血症~脱水により軽度に見える。輸液などで顕在化し、浮腫が生じたりアルドステロン分泌過剰となることがあるので、水分摂取量などには注意が必要。
筋力低下~近位筋優位。飢餓により、筋肉を分解してアミノ酸供給や糖新生を図るため
低体重では、徐脈になるが、脱水が加わると頻脈になる
低体温や冷え~甲状腺ホルモンfree T3の低下
リフィーディング症候群
飢餓状態から一転して、大量の糖が入ると、けいれんや昏睡、尿細管機能障害、呼吸不全、不整脈や心不全などが起こることがある。最も危険性が高いのは治療開始から数日後。
栄養補給を指導する際には、必ず念頭に置く。
適切な栄養補給は、浜松医大精神科のマニュアルが参考となるとのこと。
AN過食排出型とBN患者に特有の合併症
大量の食物摂取により、急激な胃の拡張で、胃破裂するケースがたまにある。
嘔吐などで胃酸での齲歯は非常に多い
嘔吐後は歯磨きはせず、弱アルカリ性マウスウォッシュがいい
唾液腺腫脹~酸の刺激で、唾液腺が刺激
低カリウム血症
皮膚症状
皮膚乾燥症~皮脂欠乏
手足のチアノーゼ~末梢循環不良
嘔吐による吐きだこ
精神症状
気分障害の合併率;
AN~31-88.9%
BN~24.1-90%
不安症;約半数でEDに先行して現れる
AN~23-72%
BN~25-75%
私は、これまでに摂食障害の方を診たことはありませんので、実際にところどう対応すべきかは分からないところがあります。
今回の報告で、こんなにもたくさんの合併症リスクがあることを知り勉強になりました。
まだ読んではいませんが、こんなのもありました。
file:///C:/Users/mariko%20pc/Downloads/guide.pdf