都城鍼灸ジャーナル

宮崎県都城市で鍼灸師をしている岩元英輔(はりきゅうマッサージReLife)です。読んだ論文を記録するためのブログです。当院のホームページ https://www.relife2019.jp/index.html しんきゅうコンパス https://www.shinq-compass.jp/salon/detail/33749

胃運動調節と鍼治療の基礎研究

Electroacupuncture at ST36 modulates gastric motility via vagovagal and sympathetic reflexes in rats.

World J Gastroenterol. 2019 May 21; 25(19): 2315-2326.より

ST36での鍼通電療法は、ラットにおける迷走神経反射および交感神経反射を介して胃運動性を調節する

 

鍼による治効理論の1つに、体性-自律神経反射がある。

日本では、佐藤昭雄先生を中心としたグループによる膨大な結果があり、基礎となっている。

今回は、足三里穴(ST36)への刺激による胃運動への影響を検討した基礎研究の報告。

 

胃運動性の調節に関わる迷走神経反射と交感神経反射の関与に関する報告は少ない。

 

方法

麻酔下ラットの胃運動を計測、自律神経を計測するため白金電極を神経に設置し、神経放電を測定。

ラットを対照群、迷走神経切断群、交感神経切断群、マイクロインジェクション群に分けた。

遺伝子組み換えマウスによる検討も行った(β1β2ノックアウトマウス・M2M3ノックアウトマウス)

 

結果

ST36への鍼通電療法(EA)は、30-120秒の胃運動亢進を示した。

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EAの間、迷走神経と交感神経の神経放電量は増加(迷走神経>交感神経)

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この胃運動性亢進は、迷走神経切除群では起こらなかった。

しかし、交感神経切除群では、0-120秒の間に起こったが、対照群の反応よりは低い反応であった。

 

ST36のEAは、M2M3ノックアウトマウスの胃運動性を低下させた

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β1β2ノックアウトマウスでは、胃運動性を亢進させた

 

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結論

ST36でのEAは、M2M3およびβ1β2受容体を介して迷走神経ならびに交感神経の反射を促し、胃運動性を調節する。