変形性膝関節症に対する鍼通電療法の刺激強度
鍼通電療法による変形性膝関節症への有効性はいくつかの報告であるが、適切な刺激設定は明らかではない。
動物実験などでは、刺激頻度の違いが疼痛抑制に関わる鎮痛物質の関与を示している。
例えば、
2Hz~βエンドルフィン
2-15Hz~エンケファリン
100Hz~ダイノルフィン
が放出されるという報告もある(Behav Brain Res. 1992; 47: 142-149.)。
こうした鎮痛系に作用する機序として、下行性疼痛抑制系や広汎性侵害抑制調節(DNIC)などの関与があるとされるが、それらと刺激条件の関連性も明らかではない。
そこで、今回の報告では、刺激強度の違いが、変形性膝関節症患者の疼痛に違いがあるか?
また、疼痛抑制系との関連性は?
について検討した報告だ。
Effects of intensity of electroacupuncture on chronic pain in patients with knee osteoarthritis: a randomaized controlled trial.
Arthritis Res Ther. 2019 May 14;21(1): 120.
変形性膝関節症患者の慢性疼痛に対する鍼通電療法の強度の影響:無作為化対照試験
研究デザイン:シングルブラインドRCT、ITT解析
対象:変形性膝関節症(KOA)患者301人
Strong EA(>2mA)~150名→最終的には145名
Weak EA(<0.5mA)~75名→72名
Sham EA(非ツボ)~76名→75名
に割付けた。
刺激方法
2週間の間に10回の施術が行われた。
1回の施術は、30分間で、EX-LE5、ST35、ST34、SP10に行った(Sham以外)。
響きが得られるように刺し(25-40㎜)、SP10とST34に通電刺激を行った。
直流電流・2Hz・0.5msのパルス幅で行った。
Shamでは、非経穴部位に細い鍼を使って(直径0.2㎜、長さ25㎜)、5-10mm刺した。
通電条件は同じで刺激強度は0.5mAとした。
評価方法
VAS、CPM、WOMAC、疼痛行動評価尺度(NPRS)、感情尺度(ES)を用いた。
CPM~上述したDNICは、動物の場合に用いる用語であり、ヒトの場合CPMと呼ぶ。2つの痛み刺激が起こった際、片方の痛み刺激を抑制する作用があるとされる。
今回の報告では、膝の特定部位(Ashi点)にフィラメントで刺激を3-5回当て、VAS評価(VAS1)を行った。ついで、手を冷水で1分冷やし、同じ膝部位のフィラメント刺激を行いVAS評価を行った(VAS2)。
CPM=(VAS1-VAS2)/VAS1×100% で算出。
これらを介入前と1週後、2週後に行った。
その結果、
3群間の患者背景
2週間の施術により、StrongEAとWeak EAはともにVASやWOMACなどの評価に改善が認められた。
CPMでは、Shamと比べ、Strong EAもWeak EAも有意な差を認めた。