脳卒中のリハビリテーションで有効なのは?
Subacute stroke physical rehabilitation evidence in activities of daily living outcomes: A systematic review of meta-analysis of randimized controlled trials.
Medicine (Baltimore).2019 Feb;98(8):e14501. doi:10.1097/MD0000000000014501.より
日常生活動作における亜急性期脳卒中のリハビリテーションのエビデンス:RCTのメタ解析のレビュー
亜急性期脳卒中のリハビリテーションに関するRCTのメタ解析を行った報告を厳選し、それをさらにメタ解析した。
集められた報告は314編(N=13787)だった。
リハビリテーションとして行われた方法は、21種類:ロボット、スリング、Wii、tDCS、鍼灸、CI療法、mCI療法、バーチャルリアリティ?、FES、反復動作訓練、両手(利き手交換)訓練、拡張訓練?、イメージ訓練、電気鍼、太極拳、水中訓練、ミラー療法、rTMS、サーキット訓練、末梢電気刺激であった。
いくつかの方法は、知らないのがあったが、とりあえず気にしないで読んでみた。
その結果、理学療法と組み合わせることで、
バーチャルリアリティ、CI療法、拡張訓練、tDCSには中等度の改善を示した。
21種類の方法の中で、唯一鍼治療のみが、理学療法と組み合わせることで勧められる方法であるとされた。
しかし、今回集められた報告から質の高い報告は得られていないため、今後のさらなる検討が必要だとされている。
鍼灸師として約15年ほど、脳卒中を専門に行ってきたため、今回のようにエビデンスが少しずつ蓄積していくことはうれしく思う。
近年のリハビリテーションでもIT化が促進されており、ロボットリハビリテーションを導入する病院や施設は増えつつある。
今回の報告では、ロボットリハは有効性が示されていない。
最近でもこんな報告がある。
A randomaized and controlled crossover study investigating the improvement of walking and posture functions in chronic stroke patients using HAL exoskeleton. The HALESTRO Study (HAL- Exoskeleton STROke Study).
Front Neurosci.2019; 13: 259.より
HALと呼ばれるロボットスーツを装着し歩行訓練を行う方法がある。
詳しい原理は割愛するが、簡単に説明すると、装着している人の下肢の筋を動かそうとすると、ロボットスーツがそれを感知して、筋力の補助をしてくれるため、簡単に立位や歩行が行えるというものだ。
今回の報告では、ボバース法とHALでリハビリの効果をクロスオーバー試験で比較したものだ。
対象は、慢性期脳卒中患者18名であった。
10mの歩行時間、Time Up and GO test(TUG)、6分間の歩行距離、歩行自立度、FAC、バランス能力について、比較した結果、
2群の間に有意差はなかった。
ボバース法と比べて、HALには歩行能力の向上を促すというエビデンスは得られなかったとしている。
この報告では、クロスオーバー試験が用いられている。この方法のメリットとして、患者を2群に分けるRCTでは患者背景に偏りがでることがあるが、それがないため結果に影響を及ぼす心配がないことである。また、人数が少なくてもRCT並みのエビデンスが確立できるという点もメリットであろう。
しかし、今回の方法は適切なのだろうか?確かに休止期間は設けているが、その期間は1週間と短いこと。そもそも慢性期脳卒中患者にクロスオーバーは適さないようにも思える。実際に私もクロスオーバー試験による研究を行ったが、累積効果などを加味すれば1ヵ月ほど休止期間を設けるべきとの指摘を受けたことがある。
またボバース法との比較もどうなんだろう?と思われる。個人的には悪くはないかも、とは思ってはいるが、最近のリハビリテーションの風潮からボバース法は脳卒中リハとして有用ではないとする意見が多い。
更に適切な状況で研究を行う必要があったのではないかとも思えるが、
今回の報告2編から、ロボットの有用性は低い可能性があると思われる。
やはり、ヒトの手で触れ、感じて、リハビリを行うのがいいのだろう。
便利な機械には、まだまだ負けてはいられない。