都城鍼灸ジャーナル

宮崎県都城市で鍼灸師をしている岩元英輔(はりきゅうマッサージReLife)です。読んだ論文を記録するためのブログです。当院のホームページ https://www.relife2019.jp/index.html しんきゅうコンパス https://www.shinq-compass.jp/salon/detail/33749

前十字靭帯損傷の身体所見と変形性膝関節症の鍼灸治療

Accuracy of physical diagnosis tests for assessing ruptures of the anterior cruciate ligment] A meta-analysis.

J Fam Pract.2003 Sep;52(9):689-94.より

前十字靭帯損傷の身体診察の精度

 

膝には、内側と外側の側副靱帯と前十字靭帯(ACL)と後十字靭帯(PCL)がある。

今回の報告は、ACL損傷の身体所見に関する報告だ。

 

ACLは、脛骨が前面に亜脱臼するのを防ぐ役割があり、時に足を踏みしめた際の膝のねじれ動作で損傷することがある。

ACL損傷で頻用される身体所見として、前方引き出しテスト・Lachmanテスト・Pivot shift徴候がある。

テスト方法は、動画参照

https://m.youtube.com/watch?v=vEQw-G1Vr18

 

この3つのテストの診断特性について、メタ解析されている。

厳選された17の報告が最終的に残り、3つのテストの評価が行われた。

 

上の表をみると、3つのテストはどれも有用であることは分かるが、Lachmanテスト以外は、その結果に幅が大きすぎる傾向にある。

前方引き出しテスト:感度18-92%、特異度78-98%の幅があり、

6studyの結果の診断特性:感度62(42-78)%、特異度88(83-92)% ()内は95%信頼区間

Lachmanテスト:感度63-93%、特異度55-99%

診断特性:感度86(76-92)%、特異度91(79-96)

Pivot shift test:感度18-48%、特異度97-99%

診断特性:特定できず

これらの結果から、除外に有用なのはLachmanテストで、確定に有用なのはPivot shift testとすれば、分かりやすいかと思う。

 

Lachmanテストは、仰臥位の姿勢になってもらい、股関節を伸展位として膝の屈曲角度は20度にとどめる姿勢から始める。

検査をする者は、片方の手で大腿下部を把持し、もう一方の手で脛骨上部をつかみ、前方に引き寄せ、靱帯に負荷をかけながら、亜脱臼がないかを観察する方法である(下図2参照)。

Pivot shift testには、いくつかの変法がある。

そこで、自分のやりやすい方法を練習しておくと困らないだろう。

 

今回のような診断特性に関する書籍として、マクギーの身体診断学があり、この中にも3つのテストについての診断特性が記載されている。

前方引き出しテスト:感度27-88%、特異度91-99%、LR+11.5、LR-0.5

Lachmanテスト:感度48-96%、特異度90-99%、LR+17.0、LR-0.2

Pivot shift test:感度6-32%、特異度96-99%、LR+8.0、LR-NS

とされている。

やはり、否定に優れているのはLachmanで、確定にはLachmanとPivot shiftが有用となる。

特にこの2つのテストを押さえておけば、ACLには対応できるだろう。

 

ACL鍼灸ではないが、変形性膝関節症における最近の報告を1つ掲載しておく。

Effects of dry needling in an exercise program for older adults with knee osteoarthritis: A pilot clinical study.

Medicine (Baltimore).2018 Jun;97(26):e11255. doi:10.1097/MD.0000000000011255.より

変形性膝関節症の高齢者の運動プログラムにおける鍼灸の効果:パイロットスタディ

 

ダブルブラインドによるRCTで、トリガーポイント鍼(N=11)とSham鍼(N=9)の比較。

評価には、NRSとWOMACを採用。

結果 各グループにおける治療前後におけるNRSとWOMACは有意な改善を示した。

しかし、Sham鍼との比較では有意差は認めなかった。

という結果だった。

 

しかし、WOMACのグラフをみると、群間比較でも有意差はでてもおかしくないと思う結果だ。

この報告は予備的実験的研究であるため、症例数が少ない。そのため症例数が増えれば、有意差がでる可能性はある。

問題は、統計学的な有意差が認められても、実際の臨床で効果を発揮できるかだ。

例えばNomber needed treatment(NNT)のような指標が臨床的であるかが問題になるだろう。

今後の報告が待たれる。