都城鍼灸ジャーナル

宮崎県都城市で鍼灸師をしている岩元英輔(はりきゅうマッサージReLife)です。読んだ論文を記録するためのブログです。当院のホームページ https://www.relife2019.jp/index.html しんきゅうコンパス https://www.shinq-compass.jp/salon/detail/33749

悪寒の違いについて

今回は、寒気、悪寒、悪寒戦慄についてまとめた。

 

これらの用語は、悪寒の分類で感染症を疑う病歴になる。

すなわち、

寒気(chilly sensation/ mild chills)~寒くて、ジャケットなどの上着を一枚羽織りたくなる状態

悪寒(chill/ moderate chills)~毛布をかぶりたい状態(震えがでるが、止めようとすれば止まる)

悪寒戦慄(shaking chills/ severe chills/rigor)~毛布をかぶっても全身が震える(震えが止めたくても止まらない・歯がガチガチ鳴るぐらい)

といったようになる(Am J Med. 2005; 118: 1417.e1-1417.e6.)。

 

この悪寒は、視床下部から熱産生を促す指令がでることで、筋肉の震えで体温を上げようとするために起こる現象である。

よって、寒気<悪寒<悪寒戦慄の順番で重症度は増加するため、患者さんには正確に聴取しなければいけない。

また、患者さんによっては、我慢強いため、悪寒なのに寒気のように装う方もいる(震えをなんとか止めている)。そんな時は、力が体に入って、こわばったような状態になるので、見逃さないようにしないといけない。

 

The degree of chills for risk of bacteremia in acute febrile illness.

Am J Med. 2005; 118: 1417.e1-1417.e6 より

 

急性の発熱患者526例を対象に、悪寒の分類を行った結果、

悪寒なし256例

寒気105例

悪寒100例

悪寒戦慄65例

血液培養結果陽性(7.6%が陽性)に対する診断精度は、

Table 4 Statistical characteristics of the different degrees of chills for bacteremia
  Mild ∼ shaking chills vs. no chills Moderate ∼ shaking chills vs. no ∼ mild chills Shaking chills vs. no ∼ moderate chills
Sensitivity, % (95% CI) 87.5 (74.4–94.5) 75.0 (60.5–85.6) 45.0 (31.8–58.6)
Specificity, % (95% CI) 51.6 (50.6–52.2) 72.2 (71.0–73.1) 90.3 (89.2–91.5)
PPV, % (95% CI) 13.0 (11.0–14.0) 18.2 (14.7–20.8) 27.7 (19.5–36.1)
NPV, % (95% CI) 98.0 (96.0–99.1) 97.2 (95.6–98.4) 95.2 (94.1–96.4)
PLR 1.81 (1.51–1.98) 2.70 (2.09–3.18) 4.65 (2.95–6.86)
NLR 0.24 (0.11–0.51) 0.35 (0.20–0.56) 0.61 (0.45–0.77)

CI = confidence interval; PPV = positive predictive value; NPV = negative predictive value; PLR = positive likelihood ratio; NLR = negative likelihood ratio.

 

であった。

悪寒と悪寒戦慄は、菌血症の可能性が上がり、

寒気もなければ、菌血症の可能性は下がる。

 

A simple algorithm for predicting bacteremia using food consumption and shaking chills: A prospective observational study.

J Hosp Med.2017 Jul;12(7): 510-515.より

 

成人患者1943例(14-93歳)を対象に、食事量の低下(通常の8割以下)と悪寒の関連を報告。

その結果223例が菌血症であり、

食事量低下の感度93.7(89.4-97.9)%、特異度34.6(33.0-36.2)%、LR+1.43(1.37-1.50)、LR-0.18(0.17-0.19)

悪寒戦慄の感度23.5(22.5-24.6)%、特異度95.1(90.7-99.4)%LR+4.78(4.56-5.00)、LR-0.80(0.77-0.84)

であった。

 

悪寒戦慄がない+食事量低下もない、ならば菌血症の可能性は2.4%だったと報告している。

 

これより、発熱患者に対して、悪寒の分類を行い、食事ができるかを聞くことが、感染症の否定につながる。

 

体温の温度は、そこまで重要ではない。以前ブログ内でも取り上げたが(迷ったときはバイタルサインを参照)、いくつかある指標(qSOFAなど)の中で、体温はなく、呼吸数が大切としている。

ので、呼吸数も併せてチェックするのがいいだろう。