都城鍼灸ジャーナル

宮崎県都城市で鍼灸師をしている岩元英輔(はりきゅうマッサージReLife)です。読んだ論文を記録するためのブログです。当院のホームページ https://www.relife2019.jp/index.html しんきゅうコンパス https://www.shinq-compass.jp/salon/detail/33749

二次性高血圧の年代別に多い原因疾患

Review
 
2010 Dec 15;82(12):1471-8.

Diagnosis of secondary hypertension: an age-based approach

 
二次性高血圧
高血圧症の約5-10%が二次性高血圧症
 
二次性高血圧症を特定するサイン;
腕と足の血圧差>20mmHg~大動脈狭窄症
徐脈/頻脈・冷熱不耐症・便秘/下痢・月経不整~甲状腺障害
いびき・日中の眠気~睡眠時無呼吸症候群
フラッシング・頭痛・不安定な血圧・起立性低血圧・動悸・発汗・失神~褐色細胞腫
野牛肩・中心性肥満・満月用顔貌・ストレッチマーク~クッシング症候群

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血圧を上げる薬剤;イブプロフェンカルバマゼピン・三環系抗うつ薬などは鍼灸院にも多くこられる
 
年齢別の二次性高血圧症;薬剤性はどの年代でも考慮
小児(18歳まで)の二次性では腎実質性疾患が最も一般的な原因。2番目が大動脈狭窄症(うっ血性心不全など)。
 
青年(19-39歳):甲状腺異常や線維筋性異型性による腎動脈狭窄
 
中年(40-64歳):アルドステロン症・睡眠時無呼吸症候群(60歳以上では少し下がる)・クッシング症候群・褐色細胞腫(0.5%とまれ)など
 
高齢(65以上):動脈硬化性腎動脈狭窄症・腎実質性疾患や腎不全・甲状腺異常
 
 

痛風

痛風」の6つの原因、ビール&魚卵より要注意の意外な食べ物は?

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トマス・ローランドソン作 「Comfort in the Gout」;痛風の快適さ

 

Review
 
2006 Oct;65(10):1301-11.
 doi: 10.1136/ard.2006.055251. Epub 2006 May 17.

EULAR evidence based recommendations for gout. Part I: Diagnosis. Report of a task force of the Standing Committee for International Clinical Studies Including Therapeutics (ESCISIT)

 
痛風の診断精度;
突然の発赤・腫脹で2週間以内に改善しなければ、痛風は否定的
発赤がなければ否定的
第1中足趾関節の発作があれば可能性は高い
Table 4 Evidence of diagnostic test: sensitivity, specificity, and likelihood ratio
 
Diagnostic test Evidence level Gold standard No of subjects Sensitivity (95% CI) Specificity (95% CI) LR (95% CI) Reference
Painful joint, swelling, abrupt onset, remission in 2 weeks(突然の関節痛・腫脹で2週以内に改善) IIb Clinical gout 820 0.98 (0.95 to 1.02) 0.23 (0.10 to 0.35) 1.27 (1.08 to 1.50) 11
Erythema(発赤) IIb Clinical gout 790 0.92 (0.88 to 0.96) 0.62 (0.58 to 0.66) 2.44 (2.19 to 2.73) 12
Podagra(第一中足趾関節の発赤) Ib Clinical gout 1681 0.96 (0.91 to 1.01) 0.97 (0.96 to 0.98) 30.64 (20.51 to 45.77) 11, 12
Definite tophus(痛風結節) Ib Clinical gout 1685 0.30 (0.24 to 0.36) 0.99 (0.99 to 1.00) 39.95 (21.06 to 75.79) 11, 12
Possible tophus Ib Clinical gout 1536 0.20 (0.13 to 0.27) 1.00 (0.99 to 1.00) 33.99 (10.71 to 107.85) 11, 12
               
Urate crystals              
Acute gout IIb Clinical gout 456 0.84 (0.77 to 0.92) 1.00 (0.99 to 1.00) 566.60 (35.46 to 9053.50) 12
Intercritical gout IIb Urate crystals 33 0.70 (0.50 to 0.87) 0.95 (0.83 to 1.08) 15.13 (0.99 to 229.95) 13
               
SUA (mg/dl)              
>6 IIb Urate crystals 32 0.67 (0.47 to 0.87) 0.78 (0.51 to 1.05) 3.00 (0.85 to 10.57) 14
Male >7 and female >6 Ib Clinical gout 4224 0.57 (0.44 to 0.70) 0.92 (0.93 to 0.94) 7.61 (5.31 to 10.91) 11, 15, 16
Hyperuricaemia (>mean+2SD) IIb Clinical gout 820 0.92 (0.88 to 0.51) 0.91 (0.88 to 0.93) 9.74 (7.45 to 12.72) 11
               
Radiology              
Asymmetrical swelling IIb Clinical gout 719 0.42 (0.33 to 0.51) 0.90 (0.87 to 0.92) 4.13 (2.97 to 5.74) 12
Subcortical cysts, no erosion IIb Clinical gout 716 0.12 (0.06 to 0.18) 0.98 (0.97 to 0.99) 6.39 (3.00 to 13.57) 12
Grade I IIb Definite tophus 4 1.00 0.00 1.00 17
Grade II IIb Definite tophus 9 0.95 (0.86 to 1.24) 0.07 (−0.01 to 0.15) 1.03 (0.90 to 1.16) 17
Grade III IIb Definite tophus 35 0.86 (0.71 to 1.01) 0.23 (0.09 to 0.35) 1.10 (0.87 to 1.40) 17
Grade IV IIb Definite tophus 15 0.57 (0.36 to 0.78) 0.93 (0.85 to 1.01) 8.00 (2.53 to 25.31) 17

X ray grades: grade I, periarticular soft tissue swelling; grade II, tophaceous deposits, eccentric or asymmetrical nodular soft tissue masses with or without calcifications; grade III, cartilaginous and osseous destruction or grade II findings plus intra‐articular or extra‐articular erosions of bone and/or joint space narrowing; grade IV, grade III finding plus intraosseous calcific deposits, subperiosteal apposition of bone, or bony ankylosis.

CI, confidence interval; LR, likelihood ratio; SUA, serum uric acid.

痛風は、高尿酸血症とセットというわけではない。

尿酸値>6mg/dl

感度67%、特異度78%、LR+3.0、LR-0.42

男性;尿酸値>7mg/dl・女性:>6mg/dl

感度57%、特異度92%、LR+7.6、LR-0.47

と尿酸値が高くなくても、痛風は否定できない。

 

悪夢障害について

睡眠障害国際分類の第3版では、

悪夢障害は、睡眠時随伴症群のレム関連睡眠時随伴症群に属するとされる。

レム関連睡眠時随伴症群には、

悪夢障害のほか、レム睡眠関連障害、反復性孤発性睡眠麻痺がある。

 

しかし、悪夢をみる疾患は、悪夢障害以外にもある。

 

悪夢を主体とする睡眠障害には、悪夢障害とレム睡眠行動異常症、急性ストレス障害PTSD、睡眠関連てんかんナルコレプシー、薬剤性がある。

悪夢障害は、不快な夢が思い出され、睡眠からの中途覚醒が繰り返し認められ、混乱や失見当識などを伴わずに覚醒するもの指す。

日本睡眠学会診断分類委員会, 訳:睡眠障害国際分類. 第2版. 米国睡眠医学会. 医学書院, 2010, p161-4.

悪夢による睡眠障害の治療方針は?|Web医事新報|日本医事新報社

悪夢自体よりも、悪夢をみる背景があることを念頭に置くことが大切。

パーキンソン病の症状の診断精度

Review
 
2003 Jan 15;289(3):347-53.
 doi: 10.1001/jama.289.3.347.

Does this patient have Parkinson disease?

 
パーキンソン病に関する6つの研究を調査し、
症状からパーキンソン病を診断する精度をだした。
 
その結果、
 
手や足の震え(振戦);安静時振戦
LR+17(6.3-44)、LR-0.25(0.08-0.78)
 
固縮;歯車様固縮
LR+2.3(1.3-4.3)、LR-0.73(0.54-0.97)
 
すくみ足;
LR+3.7(2.1-6.7)、LR-0.55(0.39-0.79)
 
小声;
LR+3.7(2.4-5.6)、LR-0.25(0.13-0.49)
 
仮面用顔貌;
LR+2.1(1.4-3.2)、LR-0.54(0.35-0.84)
 
平衡障害;プルテスト
LR+6.6(3.4-12.8)、LR-0.29(0.13-0.68)
 
PDF] Does this patient have Parkinson disease? | Semantic Scholarパーキンソン病の症状と合わせて覚えたいのが、正常圧水頭症について。上記の振戦・固縮・無動のいずれかが認められれば、正常圧水頭症の可能性は下がる( 2013 Aug;120(8):1201-7.)
;LR-0.2
 
一方、幅広歩行があると正常圧水頭症の可能性が上がる。
;LR+16(2.2-113)、LR-0.6(0.5-0.8)
 
パーキンソン病の症状は判断しやすく、油断してしまうことなく、正常圧水頭症などの可能性も忘れない。
 

腎盂腎炎の症状と身体所見の診断精度

Comparative Study
 
1998 Dec;34(6):467-73.
 doi: 10.1159/000019785.

Usefulness of history-taking, physical examination and diagnostic scoring in acute renal colic

 
急性腹痛患者1333名の病歴や身体所見などから、腎盂腎炎の診断精度を調査。
 
症状の診断精度;
片側の腰痛にて発症:特異度99%、LR+34
疼痛の持続時間≦12時間:LR+2.0
耐え難い痛み:特異度85、LR+3.1
尿路症状:特異度99、LR+3.0
Table 4. Sensitivity, specificity, efficiency, LR+, LR–, PV+ and PV– of different symptoms in detecting acute renal colic (the positive results are in parentheses)
身体所見の診断精度;
腎叩打痛:感度86%、LR+3.58、LR-0.18
Table 5. Sensitivity, specificity, efficiency, LR+, LR–, PV+ and PV– of different laboratory tests at the initial diagnostic situation in detecting acute renal colic (the positive results are in parentheses)
 
腎叩打痛は、肋骨脊柱角叩打痛と同じものだと思います。
尿路感染症に対する肋骨脊柱角叩打痛の診断精度は、
LR+1.7、LR-0.9(
2002 May 22-29;287(20):2701-10.
 )
と単独ではあまり役に立たないとするものもあるようです。

再発性尿路感染症の自己診断の精度

Clinical Trial
 
2001 Jul 3;135(1):9-16.
 doi: 10.7326/0003-4819-135-1-200107030-00004.

Patient-initiated treatment of uncomplicated recurrent urinary tract infections in young women

 
再発性尿路感染症(膀胱炎)で、患者さんの自己判断の的中率はどれくらい?
 
尿路感染症では、予防や治療のために抗菌薬が投与されることが多い。
抗菌薬は耐性菌のことも含めて、慎重に検査などを行い投与することが望ましい。
 
対象は、最近の妊娠、高血圧、糖尿病、腎障害のない18歳以上の女性。
 
172回のエピソードのうち、144回が膀胱炎だった。
これより陽性的中率は、84%であった。
 
患者さんの言うことをすべて真に受けてしまってはいけないが、少なくとも再発性の尿路感染症に関しては、8割近くは正しい。しかし2割は間違っているかもしれないので、やはり最低限の検査はする必要はある。
 
 

サルトジェネシスについて

サルトジェネシス(健康創成論)と患者力
青山幸生※1,牧 裕一※1,山本達夫※1広門靖正※1,永田勝太郎※2

Comprehensive Medicine. 2019;18(1):22-28.

全人的医療とは,医療の視点を患者の臓器単独に置くのではなく,患者をいつ,いかなる場合でも “ 病をもった人間 ”として捉え,身体・心理・社会・実存的視点から,包括的に理解し,その過程の中から患者固有の問題解決を図り,資源を見出し,それを活性化することで人間としての秩序を整えようとする医療のことである.

 

全人的医療において、

パソジェネシス;近代西洋医学に代表される病因追及論

サルトジェネシス東洋医学や心身医学に代表される健康創成論

という概念がある。

両者は、and/orの関係にある。

患者固有の資源を活性化する。⇒サルトジェネシスに相当し、資源は患者力に相当

 

サルトジェネシスは、Aaron Antonovsky(1923-1994)により提唱された新しい健康についての概念。

 

サルトジェネシスの考え方の特徴

1.健康中心主義

2.健康と病の連続性

3.ストレッサーの偏在

4.リソース志向

5.コヒアレンス感

がある。特に4と5が大切。

 

こうした考え方からなる医学は、鍼灸医学や漢方医学などの伝統的東洋医学などが含まれる。

 

病気になる病因が健康状態を決定(パソジェネシス)するのではなく、健康を守ろうとする因子(ヘルス・リソース:健康資源)も大切で、これが脅かされると病因による不健康な状態に陥る。なので、健康資源を探し、活性化させることが大切になる。

具体的な健康資源として、

①物理的資源(教育,地位,書物,経済力など),

②社会的資源(人間関係,家族,周囲の支援や理解など),

心理的資源(安定した世界観,価値観,人生観,生きる意味)など

が考えられ,特に最後の心理的資源が最も重要であると考えられている。

 

その他、重要な要素として、

コヒアレンス感:人生には意味があると思える感覚

 ~理解可能性

 ~管理可能性

 ~有意味性

がコヒアレンス感の3本柱

 

こうした考え方は難しく感じてしまいますが、普段の生活の中に潜んでいたり、ふとしたときに実感したりしているものです。

そうしたものを言語化したり、体系立てることは、難しいですが、面白くもあります。