都城鍼灸ジャーナル

宮崎県都城市で鍼灸師をしている岩元英輔(はりきゅうマッサージReLife)です。読んだ論文を記録するためのブログです。当院のホームページ https://www.relife2019.jp/index.html しんきゅうコンパス https://www.shinq-compass.jp/salon/detail/33749

講演案内

2026年2月15日、久留米にて全日本鍼灸学会九州支部認定講習会が開催されます。

3演題予定され、1つは私もお話させてもらいます。

テーマは「身体所見」

有名どころの身体所見ではなく、マニアックな身体所見を紹介する予定です。

オンラインでの講聴も出来ます。

特に鍼灸師の方で、興味のある方はぜひ。

痛む部位とは反対に鍼灸を行うとどうなるか?

鍼は痛む側と反対側のどちらが効くのか?

鍼の方法の1つに「巨刺(こし)法」というものがあります。

これは、右(左)が痛ければ左(右)に鍼をする、というものです。

 

2016年に出た論文ですが、

慢性の肩痛緩和のための対側手技鍼療法のランダム化比較試験 

Acupunct Med. 2016 Jun; 34(3): 164-70.

では、

半年以上の慢性肩痛患者80名を、ランダムに痛むのと反対側の部位に鍼をするグループ38名と何もしない待機グループ42名に振り分け、その結果、痛み評価の1つであるVASが待機グループに比べて有意な低下(改善)を示し、肩の機能改善も認められたと報告。

 

このように、痛む部位から離れた所の刺激が鎮痛効果をもたらすことが示唆されましたが、その一方で、わざわざ離れた所じゃなくて、同じ側にすれば、鎮痛効果はもっと向上するのでは?という疑問も出てきます。

 

おそらく2016年の論文を書いたのと同じ研究グループだと思いますが、

2018年に

慢性肩痛患者に対する対側または同則の鍼治療の異なる機序:パイロットスタディ

J Pain Res. 2018 Mar 7; 11: 505-514.

にて、同側vs対側で鍼の効果を比較しています。

慢性肩痛患者24名を、同側(Ipsy)ないし対側(contra)の条口穴(ST38)に鍼を行い、痛みにや肩機能の評価を行いつつ、脳機能の評価も行った。


その結果、

刺激前に比べて、同側も対側も刺激後は鎮痛と機能改善が認められ、

同側と対側で比べると、対側の方が機能改善効果が大きかった。

さらに脳機能では、

同側鍼は脳幹(視床-皮質経路)が、対側鍼は前帯状皮質(ACC)が、強く関わっていた。

とされ、

同じツボでも刺激部位で、少し異なる効果とメカニズムが作用している可能性が示されています。

しかし、この2018年の論文はパイロットスタディといって、予行練習のようなもので、この本番の論文も2020年にNeurol Plast. 2020 Apr 25; 2020: 5701042. より出ています。

これでも2018年とほとんど同様の結果が得られています。

これらの論文から、

痛みと同側の鍼は、主に脳幹部へ伝わり痛みを抑えるように働く一方で、

対側の鍼は前帯状皮質に伝わり、鎮痛よりも機能を改善するように作用する。

ことが期待できるものでした。

これらの論文は、慢性の方が対象ので、肩に対して足の刺激を行っています。

急性で、同部位の左右差でも似た結果になるのか?

についてこんな論文が参考になります。

 

若い未訓練男性における遠心性運動によって誘発される遅発性筋痛に対する電気鍼療法の効果:ランダム化比較試験

Am J Phys Med Rehabil. 2025 Aug 1; 104(8): 693-701.

 

普段運動しない男性に筋肉痛を起こさせ、同側と対側の電気鍼療法を行うと痛みの程度などはどうなるか?

19名を同側鍼(IEA)グループ9名と対側鍼(CEA)グループ10名に無作為に振り分け、上腕二頭筋に筋肉痛を起こさせた。

筋肉痛を起こす前と起こしてから鍼を実施した。

評価は、痛みVASや関節角度、特異的無細胞DNAなど。

その結果、筋肉痛は、同側鍼の方が程度が軽くなったが、関節角度は差がなかった。また酸化ストレスや特異的無細胞DNAは、同側鍼が有意な低下を認めた。

 

この報告だけで決められませんが、

急性痛のような痛みでは、対側刺激よりも同側の鍼の方が有効なのかもしれません。

しかし慢性痛では、対側の鍼も用いることでより効果が上がるのかもしれません。

 

最後に、これまで取り上げた論文は鍼によるものでしたが、

マウスを使った灸刺激による報告も載せておきます。

同側及び対側の灸は、炎症性の痛みに対して同様の鎮痛効果をもたらす

Evid-Based Complement Alternat Med. 2019 Feb 5; 2019: 1807287.

 

ホルマリンを用いた炎症性疼痛マウスの足三里に同側ないし対側の灸(37.5°の温灸)を行い、鎮痛効果を検討。

その結果、どちらも痛み行動の減少が認められた。

しかし、鎮痛様式を観察すると、

対側の灸は、局所鎮痛効果というよりも中枢性鎮痛効果の方が強い可能性が考察されています。

 

このように、鍼でも灸でも対側の刺激は鎮痛効果を起こすことが期待でき、

対側鍼では急性痛には効果が薄くとも、炎症性の急性痛ならば、灸にて対応することができるのかもしれません。

まだ課題はありますが、調べてみて面白かったです。

 

耳鳴りの鍼はどんな感じ?

本日は耳鳴りの鍼治療について。

どんな施術が行われることが多いのか?

. 2024 Mar 26;31(3):292–301.

Acupuncture for Tinnitus: A Scoping Review of Clinical Studies

耳鳴りへの鍼治療:臨床試験のスコープレビュー

 

耳鳴りと鍼に関する文献を集積し、最終的に106編が厳選された。

内訳は、

11編のシングルアーム試験

90編のオープンラベルRCT

5編のダブルブラインドRCT

大半が中国や韓国のもので、日本はなし。

80編は手技鍼治療

10編は鍼通電療法

その他

 

使用頻度の高かった経穴



治療期間や治療回数、鍼の時間、鍼の太さと長さ、鍼の深さ

治療期間(介入期間);20〜39日

回数;10〜29回の間が多数

鍼の時間;30分

鍼の深さ;20〜49mm

 通電に関して、周波数などの記載はないので、不明です。

また耳鳴りも急性なのか?慢性?で変わるのかもこの論文からは分かりませんが、おおよその目安としては参考となります。

 

 

 

 

 

ハムストリングはこれでも変わる

筋肉の柔軟性は、対象となる筋肉を刺激しないと変わらない。と思ってしまいますが、意外とそうではないという話です。

 

太ももの後面(もも裏)は、大腿二頭筋と半腱・半膜様筋3つの筋肉を合わせてハムストリングと呼ぶことがあります。前ももは、大腿四頭筋があり、これらの筋肉は、ランニング時などでは、ハムストリングがアクセル筋で、大腿四頭筋がブレーキ筋と言われたりもします。

なので、座ることが多い仕事などでは、ハムストリングが硬くなり伸びにくくなったりもします。そのためハムストリングのストレッチを行いましょう。と指導された方もいると思います。

これは間違いではないのですが、本日紹介するのは、意外な場所をほぐすことでも、ハムストリングが変わるという論文です。

 

その意外な場所とは、首の付け根にある「後頭下筋(こうとうかきん)」という筋肉です。

鍼灸マッサージでは、風池穴などがあり、臨床現場でも用いられることが多い経穴です。

 

目の疲れなどでこの筋肉をほぐすことがありますが、この筋肉を刺激することで、ハムストリングが伸びるという結果がいくつか報告されています。

 

論文タイトル: Immediate Effects Of Suboccipital Inhibition Technique Vs Passive Stretching In Hamstring Tightness: Comparative Study

 

後頭下筋を緩める指圧法を行う20名とハムストリングの伸展ストレッチを行う20名の2グループで、ハムストリングの評価を行った。

 

評価は、シットアンドリーチテスト、AKETの2種類を刺激前後で比較。

その結果、

後頭下筋グループとハムストリングストレッチグループともに、有意な改善が認められた。

また、グループ間には有意差はなかったとしています。

これは、後頭下筋を指圧するのと、ハムストリングをストレッチするのは同程度の効果があるかもしれないということになります。

 

またべつの論文は、

後頭下筋はハムストリングを緩め、ハムストリングストレッチは後頭下筋による首の痛みを軽減する双方向作用の可能性を示唆しています。

 

論文タイトル: Immediate effects of static and proprioceptive neuromuscular facilitation stretching of hamstring muscles on straight leg raise, craniovertebral angle, and cervical spine range of motion in neck pain patients with hamstring tightness: A prospective randomized controlled trial

 

雑誌名: 

J Back Musculoskelet Rehabil. 2022;35(2):429-438.

doi: 10.3233/BMR-201840.

 

なぜ、後頭下筋を緩めるとハムストリングも緩むのか?について、まだ分かってない部分も多いです。筋連結やアナトミートレインによる考察もありますが、おそらくそれだけではないはずです。

機序は不明ではありますが、首を刺激すると、足が変わるというのは、非常に興味深いものです。

 

ツボは必要な時に現れる

本日は、経穴(ツボ)に関する論文を紹介します。

 

Comparative Study 

雑誌: PLoS One. 2025 Sep 26;20(9):e0331868.

doi: 10.1371/journal.pone.0331868, eCollection 2025.

タイトル: The specificity for the correlation between viscera and somato in chronic stable angina pectoris patients and healthy controls: An assessor-blinded and comparative trial

慢性安定狭心症患者と健常対照者における内臓と体組織の 相関の特異性:評価者盲検比較試験

著者: Yongliang Jiang 1, Xiaoyu Li 1, Xiaofen He 1, Hantong Hu 12, Yajun Zhang 1, Xiaomei Shao 1,

Jianqiao Fang 

 

 

関連痛と呼ばれる、内臓の状態が体表面の痛みなどとして現れることを指す現象があります。

例えば、心臓が悪くなると、左肩や小指が痛むなどがそれです。

このように内臓の状態が悪くなると体のどこかに反応が起こるものに、経穴もあります。

 

今回の論文では、慢性安定狭心症の患者を対象に、前腕部のツボに反応が起こるか?を調べた報告です。

 

対象は、40名の慢性安定狭心症患者(CSAP)と、40名の健常者です。

 

心臓と関連する前腕部の心経と肺経に対して、

レーザードップラーやサーモグラフィなどを用いて、皮膚温や血流などを測定。

主な測定項目は、

微小局所血流:PU値

局所皮膚温

局所酸素飽和度:rSO2

の3点に対して、研究対象の割り付けを知らない第三者が測定評価するブラインドを行った。

 

評価部位は、4ポイント

肺経のLU5(尺沢)

          LU9(太淵)

心経のHT3(少海)

           HT7(神門)

 

だった。

 

その結果、

PU値は、

 

狭心症患者の心経で血流増加反応があり、

皮膚温では、

上図のaは健常者、bは慢性安定狭心症患者

 

尺沢以外の3穴に狭心症患者の温度上昇が認められた。

 

酸素飽和度は、

狭心症患者の心経の少海に減少が認められた。

 

この結果のように、

心臓と関連するとされる経穴は、健常者に比べ狭心症患者で反応が異なることが認められました。

必要な時に必要な部位でツボが顔を出す。

そこが鍼灸師にとっての施術部位となるので、昔から言われていたことの1つの証明になると思われます。

 

実際の鍼灸現場では、こうした測定機器を用いることはないので、手の感覚で、ツボの反応を確認することになり、そこに熟練者との差が生まれているのかもしれません。

 

本日はこの辺で〆ます。

 

 

日本は他国と比べて画像診断が盛んであると言われます。

どの病院に行っても、画像で判断できる安心感はとても素晴らしいものですが、それだけに頼ってしまうと、時に思い込みにハマってしまうかもしれません。

本日取り上げるのは、10年ほど前の論文ではありますが、

 

Systematic literature review of imaging features of spinal degeneration in asymptomatic populations

W Brinjikji et al. AJNR Am J Neuroradiol. 2015 Apr.

無症候性集団における脊椎変性の画像所見に関する系統的文献レビュー

 

特に症状の訴えのない人3110名を集めて、MRIやCTの脊椎画像を調べた。

画像所見として、

椎間板変性

椎間板膨隆

椎間板突出

線維輪列隙

の所見について調査。

 

その結果、年代別に比べると

椎間板変性 20代:37%→80代:96%

椎間板膨隆 20代:30%→80代:84%

椎間板突出 20代:29%→80代:43%

線維輪列隙 20代:19%→80代:29%

と年代が上がるにつれ、変性所見の増加があった。

 

これより、無症状であっても、画像所見では異常が認められることがあり、年代が上がるとその割合も増加する。

こうした文献は当時いくつか報告されるようになり、現在では、椎間板の異常だけでは症状は起きず、そこに局所の血流障害が加わることで症状が引き起こされるとされています。

たとえその時は症状がなくとも、将来のリスク抱えているのに変わりはないので、血流障害を予防するきっかけにはなるかもしれません。

痩せるにもエネルギーは必要

本日は、鍼灸は関係ないですが、たまに相談されるので、ダイエットに関する僕の考えを書いておこうと思います。

 

大前提として、

糖尿病などの生活習慣病の予防・対策や体重過多による骨・関節の負担軽減といった疾病対策ではない限り、日本人は過度なダイエットは必要ないと考えています。

ですが、男性も女性も、いくつになってもカッコいい、キレイと思われたい気持ちはわかるので、ダイエット自体を否定するつもりはありません。ただ、年々拒食症患者が増えている現実などもふまえて、急激なダイエットには反対です。長期的なスパンで体型をコントロールするのが僕はいいと思います。

 

そこで本日紹介する論文は、

「痩せるにもエネルギーは必要」

という内容のものです。

 

雑誌> Metabolism. 2012 Jul;61(7):937-43. doi: 10.1016/j.metabol.2011.11.012.

Epub 2012 Jan 16.

タイトル Energy content of weight loss: kinetic features during voluntary caloric restriction

著者 Steven B Heymsfield 1, Diana Thomas, Corby K Martin, Leanne M Redman, Boyd Strauss, Anja Bosy-Westphal, Manfred J Müller, Wei Shen, Allison Martin Nguyen

 

ダイエットを始めると、最初は思ってた以上に痩せて嬉しくなりますが、次第に同じように過ごしてるのに、だんだん痩せにくくなり、ダイエットから脱落してしまう。そしてリバウンドする。という経験をした方もいらっしゃるのではないでしょうか?

 

ダイエット初期は、体の中の水分やタンパク質などが減少していき、後半になり、脂肪などが減っていきます。

なのでダイエット後期は、水などを排出するエネルギーに脂肪燃焼エネルギーが加わってくるので、痩せにくくなります。

それを表したのが、図になります。

上の図は、ダイエット開始から24週に渡って、体重1kgを減らすためのエネルギー量をグラフにしたものです。

体重1kg減らすのに、4週目は約4800kcal消費する必要がありましたが、24週目には7000kcalが必要だったとしています。

この数字自体は、対象が中年男女で開始時の体重が80kgぐらいある方なので、日本人とは合わないかもしれませんので、深く気にする必要はありません。

ここで注目したいのは、同じ1kg減らすのにダイエット初期と後期では、エネルギー消費量が増えるということです。

こうした事実を考えると、

最初からハイペースでダイエットを始めると、後半はスーパーハイペースで走らないと同じように痩せることはできなくなります。

なので、

ダイエット初期は、生活習慣の見直しなどから始めて、徐々に負荷を高めていく方法が、体に負担なく痩せられると思います。

また、痩せるにもエネルギーが必要なので、食事を摂らないといった方法は、エネルギーが枯渇しやすく、痩せるためのエネルギー不足に陥る可能性もあるので、必要な栄養は確実に摂る方がいいでしょう。

本日の論文から分かることは、これぐらいでしょうか。

参考になれば幸いです。