都城鍼灸ジャーナル

宮崎県都城市で鍼灸師をしている岩元英輔(はりきゅうマッサージReLife)です。読んだ論文を記録するためのブログです。当院のホームページ https://www.relife2019.jp/index.html しんきゅうコンパス https://www.shinq-compass.jp/salon/detail/33749

胃食道逆流症(GERD)の症状頻度

胃食道逆流症(GERD)は、

胃酸を含む内容物が、食道に逆流する病態の全般を指す。

症状や病態で、

逆流性食道炎と非びらん性胃食道逆流症(NERD)に分けられます。

大まかには、

胸やけや呑酸(胃液などで口が酸っぱいまたは苦い状態)があり、内視鏡にてびらんや潰瘍がある状態を逆流性食道炎

症状は同じでも、内視鏡では異常がないものをNERDとしています。

 

まずは、日本人を対象にした健康診断で食道炎と診断された割合について。

Randomized Controlled Trial
 
. 2005 Sep;40(9):1005-9.
 doi: 10.1080/00365520510023260.

Prevalence of endoscopically negative and positive gastroesophageal reflux disease in the Japanese

 
日本人2760名(平均年齢50.4歳、24-84歳)を対象に、
症状は、日本語版Carlsson-Dent自己記入式質問票(QUEST)に自己記入し、
内視鏡検査を実施。
診断結果を、所見なし・NERD・症候性GERD・無症候性GERDの4つに分類。
その結果、
所見なし;82.1%
NERD;10.9%
症候性GERD;1.8%
無症候性GERD;5.2%
と、GERDが約18%を占めていた。
またNERD>無症候性GERD>症候性GERDの順で多かった。
 
年代別の症状の頻度;
. 2006 Oct;54(10):1537-42. doi: 10.1111/j.1532-5415.2006.00899.x.

Clinical features of reflux esophagitis in older people: a study of 840 consecutive patients

 
840人の患者を対象に調査した結果、年代別に症状の頻度をみると、
胸やけや呑酸は年齢が高くなるにつれ訴える割合は減り、高齢者では食欲低下、貧血、嘔吐といった症状を訴える割合が高くなる傾向にある。
下グラフの疼痛とは、胸骨後痛や心窩部痛を指す

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逆流性食道炎との鑑別にあがる食道がん(EAC)と症状の違い;
 
Comparative Study
 
. 2004 Jun;239(6):849-56; discussion 856-8.
doi: 10.1097/01.sla.0000128303.05898.ee.

Laryngopharyngeal reflux symptoms better predict the presence of esophageal adenocarcinoma than typical gastroesophageal reflux symptoms


食道がん患者63名
GERD患者50名
健常者56名
の3グループで比較。
 
逆流症状以外に咽頭喉頭症状があれば、食道がんの可能性があるので、鍼灸院ではここは確認しておきたいところ。
しかし、胸やけや胃酸逆流症状のみであったとしても2割は食道がんの可能性があることも知っておく。

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このほか、高齢者の胸やけの訴えが「胸痛」と混同されることがあります。
年齢が高くなるにつれ、GERDにおける胸やけ症状は頻度が下がります。
そこで高齢者が急性の胸やけを訴える場合は、胸痛の可能性(心疾患など)を考慮して病院精査(心電図など)を行ってもらうように勧める方がいいと考えます。