都城鍼灸ジャーナル

宮崎県都城市で鍼灸師をしている岩元英輔(はりきゅうマッサージReLife)です。読んだ論文を記録するためのブログです。当院のホームページ https://www.relife2019.jp/index.html しんきゅうコンパス https://www.shinq-compass.jp/salon/detail/33749

パニック障害について

不安障害研究,4(1), 37–43, 2013

パニック障害における脳構造の変化
浅見 剛 小西 潤 平安良雄

 

パニック障害は、不安障害に分類される。

 

不安障害には、パニック障害の他、社会不安障害や社交不安障害、全般性不安障害強迫性障害がある。

生涯有病率は9.2%(厚生労働省調査)とされ(他の文献では3.5-4.5%というものもある)、約10人に1人が一生のうちにかかるとされる。

 

パニック障害

動悸・胸部圧迫感・窒息感・死ぬことへの恐怖などを感じるなどのパニック発作が生じる。

パニック発作の生涯経験率は20%とされる。

 

パニック障害は、将来のうつ病に移行することがあるため、

早期から対応することが求められる。

パニック障害ってどんな病気? | パニック障害の情報・サポートサイト こころの陽だまり

https://www.cocoro-h.jp/panic/about_panic/index.htmlより

 

そのパニック障害のメカニズムは不明な点も多いが、1つは脳機能の変化やセロトニンの関与が明らかにされつつある。

 

脳機能からみた病態;

扁桃体を中心とした大脳辺縁系(帯状回・島回など)や前頭葉視床、脳幹などが関与する。

MRIを用いた研究では、大脳辺縁系前頭葉などの灰白質容積の減少、脳幹の容積増大が報告されている。これらの容積変化と不安評価尺度との相関があるとされる。

またパニック障害には、性差があることから脳機能の面からの解析もされつつある。

 

扁桃体・海馬;

不安・情動・記憶と関わるが、パニック障害では、海馬の容積は変化しないとされる。

しかし一部の報告では容積が増加したとするものもあり、その差異としてSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害)が海馬の神経新生させることから、容積増大したのでは?とされている。

 

扁桃体は左右とも容積変化が起こり、右側扁桃体の容積減少で神経症傾向が強くなり、左側扁桃体の容積減少で不安が強くなるとされる(

2009 Jun;63(3):266-76.)

 

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青マルはパニック障害患者、赤マルは健康な方

STAI-Sスコアは不安が強いほど高得点になり、左扁桃体の容積減少と相関(r = -0.545、P = 0.016)

Neuroticism Scoreは神経症スコアで、右扁桃体容積の減少と相関(r = -0.483、P = 0.036)

 

前頭葉

以前から前頭葉の関与は知られているが、

前頭前野と広場恐怖や恐怖回避の関係が示されつつある。

右側前頭葉容積の減少とパニック障害の関係が報告されている。

前頭葉扁桃体と連結し、前頭葉扁桃体を制御しているとされている。

この前頭葉が機能不全に陥ると扁桃体の制御不能となる。

 

この他にも脳幹や視床などの脳の変化が報告されている。

 

性差;

女性は男性の2倍の発生率

再発率も女性が約3倍とされている。

好発年齢は、男性15-24歳、女性35-44歳と差異がある。

これらに関する脳機能の研究は、少数あり、その報告も対象人数が少ないため、まだはっきりとは分かっていないよう。