パニック障害について
不安障害研究,4(1), 37–43, 2013
パニック障害における脳構造の変化
浅見 剛 小西 潤 平安良雄
パニック障害は、不安障害に分類される。
不安障害には、パニック障害の他、社会不安障害や社交不安障害、全般性不安障害、強迫性障害がある。
生涯有病率は9.2%(厚生労働省調査)とされ(他の文献では3.5-4.5%というものもある)、約10人に1人が一生のうちにかかるとされる。
動悸・胸部圧迫感・窒息感・死ぬことへの恐怖などを感じるなどのパニック発作が生じる。
パニック発作の生涯経験率は20%とされる。
早期から対応することが求められる。
https://www.cocoro-h.jp/panic/about_panic/index.htmlより
そのパニック障害のメカニズムは不明な点も多いが、1つは脳機能の変化やセロトニンの関与が明らかにされつつある。
脳機能からみた病態;
扁桃体を中心とした大脳辺縁系(帯状回・島回など)や前頭葉、視床、脳幹などが関与する。
MRIを用いた研究では、大脳辺縁系や前頭葉などの灰白質容積の減少、脳幹の容積増大が報告されている。これらの容積変化と不安評価尺度との相関があるとされる。
またパニック障害には、性差があることから脳機能の面からの解析もされつつある。
扁桃体・海馬;
不安・情動・記憶と関わるが、パニック障害では、海馬の容積は変化しないとされる。
しかし一部の報告では容積が増加したとするものもあり、その差異としてSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害)が海馬の神経新生させることから、容積増大したのでは?とされている。
扁桃体は左右とも容積変化が起こり、右側扁桃体の容積減少で神経症傾向が強くなり、左側扁桃体の容積減少で不安が強くなるとされる(
. 2009 Jun;63(3):266-76.)
。
青マルはパニック障害患者、赤マルは健康な方
STAI-Sスコアは不安が強いほど高得点になり、左扁桃体の容積減少と相関(r = -0.545、P = 0.016)
Neuroticism Scoreは神経症スコアで、右扁桃体容積の減少と相関(r = -0.483、P = 0.036)
前頭葉;
以前から前頭葉の関与は知られているが、
前頭前野と広場恐怖や恐怖回避の関係が示されつつある。
前頭葉は扁桃体と連結し、前頭葉が扁桃体を制御しているとされている。
この他にも脳幹や視床などの脳の変化が報告されている。
性差;
女性は男性の2倍の発生率
再発率も女性が約3倍とされている。
好発年齢は、男性15-24歳、女性35-44歳と差異がある。
これらに関する脳機能の研究は、少数あり、その報告も対象人数が少ないため、まだはっきりとは分かっていないよう。