シミについて
本日は、顔のシミについて。
水野優起.顔がシミだらけにならないようにするためのお話.順天堂医学.2006;52:437-442.
シミとは、主にメラニン色素の増加によって起こる色素異常症(色素沈着症)を指す。
このメラニンとは、表皮と真皮の境界である基底膜部のケラチノサイト(角化細胞)に分布する褐色状の顆粒で、ケラチノサイトの核の上に帽子状に分布し、紫外線からのDNA損傷を防御する役割を担う。
メラニンはメラノサイト(色素細胞)から産生(メラノソーム)され、ケラチノサイトに渡される。
ケラチノサイトがメラニンを消化し、やがて角質とともに剥がれ落ちる。
やけどや湿疹などでケラチノサイトの損傷が起こると、保持していたメラニンが真皮層へ滴落し、真皮層でマクロファージが貪食(メラノファージ)やリンパ管を介して排出される。
シミはメラニン色素の増加で起こるので、シミの発生には、
・メラニンの産生が過剰となるパターン
・産生は正常でも、消化・排出が滞るパターン
で発生する。
これらはいずれも、皮膚でメラニンの産生と消化のバランスが崩れた状態を表す。
この状態を細かく分類すると、
1.メラノサイトの異常(メラノサイトの増加・メラノソームの生産亢進)
2.ケラチノサイトの異常(ケラチノサイトの増殖・メラノサイトの過剰活性・ターンオーバーの低下)
3.炎症後の色素沈着(メラニン産生亢進・ケラチノサイトの変性や壊死による含有メラニンの真皮への滴落)
メラノサイトの異常な増殖によるシミ:・肝斑
ケラチノサイトの異常が原因のシミ:日光黒子(老人性色素斑)・脂漏性角化症
炎症後の色素沈着が原因のシミ:色素沈着性接触皮膚炎・固定薬疹
となる。
個人的には、美容鍼でターンオーバーを促進して、ケラチノサイトの正常化を図る(上記2に有効)。
ケラチノサイトがメラニン細胞を受け取り消化するので、ケラチノサイトの代謝を上げればメラニンが過剰に産生されても消費がやがて追いつく可能性がある(1に有効)。
炎症は早期に沈静化すれば色素沈着は防げるので、炎症抑制を目的とした鍼を行うことで予防になる可能性がある(3に有効)。
と思っています。
ですが、その根拠に乏しいのが現状です。
雀卵斑(そばかす);
両頬から鼻背にかけて5mmまでの淡褐色の色素斑が3歳頃から出現しだす。
色白の人に多く、遺伝性である。
メラノサイトの数は変わらないが、メラニンの産生が亢進している。
肝斑;
医学的なシミは、基本的に肝斑を指すことが多い。
30歳と40歳代に多い。
紫外線が最も当たる前額・頬骨部・上口唇・下顎に境界明瞭な褐色の色素斑。
メラノサイトの数は正常・メラニンの産生亢進・メラニンを含む樹枝状突起が認められる。
紫外線で増悪し、ケラチノサイトが通常よりも高いレベルのメラニンを産生している。
日光黒子(老人性色素斑);
40歳以降、顔面や手背および前腕などの日光露出部に多発する淡~濃褐色の境界明瞭な色素斑。
ケラチノサイトが光老化し、メラノサイトを活性化するエンドセリンの分泌が亢進した結果生じる。
脂漏性角化症;
ケラチノサイトの増殖に伴うメラニンの増加によって、黒褐色から黒色に見える皮膚の良性腫瘍。
40歳代以降の男女に高頻度にみられる。
色素沈着性接触皮膚炎;
紫褐色ないし紫灰色の色素斑が炎症後に残る接触皮膚炎。
原因物質を除去すれば、半年~一年で色素沈着は改善する。
固定薬疹;
薬剤によって炎症が惹起され、メラニンが真皮へ滴落しメラノファージが多くなったために、紫褐色の色素斑が長く残存する。
まずは、予防が大切で、すべてのシミに共通するのは紫外線。
美容鍼はシミを薄くすることは経験で知ってはいるが、その機序に関してはあまり分かっていない点もある。
シミと言っても色んな種類があり、なり方も変わるので、すべてのシミに有効なのか?またその機序について考えなければいけないと思います。