浮き趾について
本日は、浮き指(浮き趾)についてです。
先日は、陸上をしている10歳の子が来られましたが、足をみると浮き指でした。
浮き指は、足趾が床面に接地していないことを指す。
浮き指になると、どんな健康被害が生じるのか?または身体的不具合が発生するのか?などは意外と報告がないようです。
土踏まずは4歳までに形成され、12歳頃までには成人と同じパターンの足アーチができるが、それまでに形成されない子供は浮き指になりやすい。
早いと浮き指は、幼児の頃から発生しているようです。
まずは、頻度について。
原田(靴の医学.2001;15:14-18.)は、幼児の1980年と2000年での浮き指の発生率を比較。
その結果、1980年はわずかな発生率だったが、2000年は50%(左右ともに)超え激増したとしている。
幼児193名の足の調査では、完全・不完全な浮き指を合わせて、第5趾74.2%、4趾29.0%、3趾18.6%、2趾26.4%であった。
児童(小学5・6年生)を対象とした報告(靴の医学.2001;15:19-23.)では、第5趾の浮き趾51%、全体でも不完全な接地を含めると72%になると報告。
健常成人155人(男性50人・女性105人、16-49歳)を対象とした報告では、接地不十分な者は男性66.0%、女性76.2%で、浮き指(下表のグレードFに相当)は男性の右足46.0%・左足30.0%、女性の右足38.7%・左足35.8%に認められ、第5趾に多いとしている(理学療法学.2006;33(1):30-37.)。
女子大学生82名(19.7±1.47歳)の足の調査をした報告では、外反母趾などの変形を認めたのは6.1%、第5趾の浮き指40.2%、鉤足7.3%、扁平足8.5%に認められた。
土踏まずがない(扁平足)と浮き指になりやすいが、この報告では、浮き指の発生率と偏平足の発生率には解離があるようです。他の要因もあるということ。
脱線しますが、扁平足ってどう決めるか知ってますか(Int Orthop. 2013 Jun;37(6):1107-12. )?
扁平足率=足長÷舟状骨結節の高さ
=正常中央値5.48±3.67、扁平足中央値8.98±4.65、
カットオフ値6.7407(感度86%・特異度75%)
とされています。また他の指標もあるようです。
幼児期より、後脛骨筋がうまく使えていないと扁平足になりやすいようです。
そのほか睡眠時間や体重、競技時間なども関係があるかもということです。
おおよそ年代での違いや性別での違いが多少はありますが、30~50%ぐらいの範囲で浮き指がありそうです。また、完全には浮いてはいないけど、接地面が不完全なものも含めると7割近くになる。
足趾は、第1趾と第2-5趾では、少し機能が異なる。
前足部に体重が移動した際に、第1趾は偏倚した体重心を支持する作用があり、第2-5趾は偏倚した体重心を中心に戻す作用がある。
今回の報告では、第5趾の浮き指が多いので、前足部に体重移動した際に、第1趾に体重が上手くのらず、外側に逃げる形になると思われます。そうすると、腓骨筋や大腿外側部の筋肉が緊張した状態になり、増悪するとO脚などに進展することが予想されます。
第5趾の接地状態に合わせて点数化し、運動能力との相関をみた報告では、0-1点は不完全な接地をB群、2点は接地できているをA群に分けた結果、前方移動能力の低下などが認められた(理学療法科学.2009;24(5):683-687.)。
浮き指の改善には、足底の筋肉への刺激が有用とされています。
例えば、床にタオルを置いて、端を足趾でつまみ、引き寄せるなどの運動が有名です。
こうした運動を大学生11名に週3回、8週間行わせ、運動前・運動8週後・運動中止3か月後で比較したものでは、
3か月後も下肢の運動能力はおおよそ維持されているとされたが、コントロール群が設定されていないので参考程度(整形外科と災害外科.1997;46(2):393-397.)。
個人的には、タオルの指つかみ運動は、勧めていません。
指を動かすこと自体は悪いとは思いませんが、足底の筋肉が硬くなるケースをいくつか経験していません。
そうすると、浮き指を結果的に阻害することになるかもしれません。
なので私は、土踏まず辺りを指で押さえ(後脛骨筋の刺激)、指を色々な方向に動かすことを指導しています。
また、こうした動きは足の縦アーチ形成に役立つと思いますが、横アーチには弱いような気がしています。
ですので、横アーチを形成する指の使い方も指導しています。
この他、インソールによる足底刺激の部位が異なると足圧中心動揺に違いがでるかを検討した報告では、中足骨頭から足指先端までの前足部を刺激するグループが最も改善したとしている(理学療法科学.2013;26(6):801-4.)。
この効果の機序に関しては検討されてはいないが、メカノレセプターの関与を考察している。
メカノレセプターは、関節部にもあるが、足底もある。
下図をみてもらうと、前足部の特に第1趾に多いことが分かります。
第5趾に浮き指がでると、
踵から中足部に向かって体重が移動し、本来ならば第2-5趾の働きで、中心(第1趾)に向かうベクトルが出る(中足部から前足部へ移動する際)のですが、第5趾が浮指になるとそのベクトルが弱まり、第1趾のメカノレセプターが最大限に働かず、結果として、バランス異常・歩行能力の低下につながると考えられます。
ここに扁平足が加わると、
距骨の内前方(舟状骨あたり)に荷重が加わるので、足底の内側(内側縦アーチ部)に負担がかかり、第5趾の浮き指につながる?と予想されます。
なんだか、頭が困惑してきました。
近いうちにもっと調べてみたいと思います。