胸壁症候群について

本日は胸壁症候群についての報告です。

以前も取り上げています。

「若年の胸が痛い」

https://ararepyon.hatenablog.com/entry/2019/10/17/084011

「急性心膜炎の症状」

https://ararepyon.hatenablog.com/entry/2019/09/13/080029

併せて読んでもらうと、いいかもしれません。

Bosner S,et al. Chest wall syndrome in primary care patients with chest pain: presentation, associated features and diagnosis.Fam Pract. 2010 Aug; 27(4):363-9.

Pain characteristics of patients presenting with CWS (n = 565)

胸壁症候群(ＣＷＳ)患者565人の特徴

疼痛部位：疼痛部位は、胸骨の後側か左側が持続的か30分以上、刺すような痛みが時間に関係なくあることが多い。

日内変動：

持続時間：

痛みの性状：

ＣＷＳに対する病歴の診断精度：感度の高いものはないので、簡単に否定はできない。

Clinical characteristics associated with CWS (univariable model, n = 1212)

Index test	Sensitivity (%)	Specificity (%)	PPV (%)	NPV (%)	OR	P value
患者は通常と異なって見える	11.5	79.8	34.1	49.7	0.51	<0.001
何かがおかしい	7.2	83.5	27.3	51.2	0.39	<0.001
顔面蒼白	4.8	86.1	22.8	51.3	0.31	<0.001
神経質な患者	17.3	77.4	39.4	52.4	0.72	0.024
圧迫痛	35.1	50.0	38.2	46.6	0.54	<0.001
嘔吐	4.8	90.4	30.3	52.1	0.47	0.001
呼吸困難	15.6	71.7	32.5	49.3	0.47	<0.001
体がきつい	29.6	63.4	41.3	50.7	0.73	0.009
呼吸器感染症	3.9	85.9	19.5	50.6	0.25	<0.001
呼吸で痛みが悪化	24.4	81.0	52.9	55.1	1.38	0.022
脳血管性病変の既往	9.9	81.1	31.5	50.8	0.47	<0.001
胸骨後部の痛み	52.0	37.7	42.2	47.4	0.66	<0.001
胸部左側の痛み	69.2	41.3	50.7	60.5	1.58	<0.001
胸骨後部への放散痛	3.5	94.0	33.9	52.7	0.57	0.045
診察時も痛い	58.1	49.4	50.1	57.4	1.35	0.010
疼痛 >24 時間	28.0	78.5	53.2	55.5	1.42	0.009
正午に痛む	2.3	95.4	30.6	52.5	0.49	0.046
訪問の必要(病院にいけない)	2.3	93.4	23.2	52.2	0.33	<0.001
咳	5.5	80.1	19.4	49.2	0.23	<0.001
局所的な筋緊張	61.3	74.6	70.7	65.9	4.67	<0.001
刺すような痛み	53.0	71.6	62.2	63.3	2.84	<0.001
触診で疼痛再現	62.1	70.1	68.0	64.4	3.85	<0.001
運動で悪化	39.1	81.6	65.0	60.6	2.85	<0.001
運動による痛み	16.6	74.5	36.3	50.6	0.58	<0.001
心不全	4.2	92.0	31.6	52.4	0.51	0.007

NPV, negative predictive value; PPV, positive predictive value.

 

4つの質問の組み合わせの精度

Components of the CWS score

Score criteria	Points
局所的な筋緊張	1点
刺すような痛み	1 点
触診で疼痛再現	1 点
咳はでない	1 点

CWS score: sensitivities, specificities, LR, PPV and NPV for two different cut-off points

Cut-off	Sensitivity (%)	Specificity (%)	LR+	LR−	PPV (%)	NPV (%)
1点	89.6	50.9	1.82	0.20	66.0	82.1
2点	63.1	79.1	3.02	0.47	76.3	66.8

LR, likelihood ratios; PPV, positive predictive values; NPV, negative predictive values.

1点以下であれば、胸壁症候群は可能性が下がる。

2点以上であれば、可能性が上がる。

胸痛の多くは、筋骨格系である場合が多いとはいえ、心疾患や肺などの疾患は怖いです。

4つの質問が1点以下だった場合、胸壁症候群の可能性が下がるため、病院受診を勧めるほうがよさそう。

ただ、上記の質問票での結果は、3-4点の精度が記載されておらず、不明ですが、精度は2点と変わらないのでしょうか？

鍼灸院の場合のカットオフ値も2点で大丈夫だろうか？少し気になります。