都城鍼灸ジャーナル

宮崎県都城市で鍼灸師をしている岩元英輔(はりきゅうマッサージReLife)です。読んだ論文を記録するためのブログです。当院のホームページ https://www.relife2019.jp/index.html しんきゅうコンパス https://www.shinq-compass.jp/salon/detail/33749

爪白癬について

以前、ブログの中で爪を観察することで、様々な疾患が示唆されるということを書きました。

本日も爪に関する報告を集めてみました。

 

本日は、爪白癬に関する内容です。

 

まずは、日本での有病率に関する報告です。

 

Shimoyama H, et al. 2016 epidemiological survey of dermatomycoses in japan. Med Mycol J. 2019;60 (3): 75-82.

 

皮膚真菌症の疫学調査で、6776例を分析した。

全国の各医療機関で調査。

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その結果、

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皮膚糸状菌症:5772例(85.2%)

 足白癬;3314例

 爪白癬;1634例

 体白癬;423例

 下垂白癬(鼠径部皮膚真菌症);316例

 などと

爪白癬が2番目に多い。

 

カンジダ症:757例(11.2%)

 カンジダ間部;181例

 口腔カンジダ症;165例 

 性器カンジダ症;119例

 おむつカンジダ症;113例

など

 

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足白癬と爪白癬の年齢別グラフをみると、加齢に伴い増加することが分かる。

それでは、これらの爪白癬に対して、数年前に保険認可がおりた外用剤2種類の効果はどうなのか?

 

Kawai M. Characteristics and efficacy of two topical therapeutic agents for onychomycosis. Med Mycol J. 2019;60(3):71-4.

 

足白癬や爪白癬の治療の第1選択薬は、経口抗真菌剤だが、高齢者には基礎疾患や肝機能障害が併発していることが多く、その場合使用できない。

そのため、外用剤による選択しかない。

2014年エフィナコナゾール、2016年ルリコナゾールが日本で承認された。

この2種類の効果はどうか?

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両方とも有効率(治癒から改善までをふくむ)は高い。

 

では、鍼灸治療の効果はどうだろう?

爪白癬に関しては、症例報告が1編みつけられた。

他にもあるかもしれないが、今回はこれを紹介します。

 

校篠由紀、他.灸療法で軽快した爪白癬の1例.皮膚の科学.2002;1(5):335-7.

 

67歳、男性.

主訴:手足の爪の白濁・肥厚・脆弱化

知熱灸を実施(週1-2回)。

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親指はとくに変化があったが、他の指は改善が乏しかった。

真菌の適正培養温度は37℃で、知熱灸は40℃を超えることから、白癬菌の増殖を抑制できる可能性がある。

母指は、他の指と比べ爪の成長速度が速いためと考えられるとしている。

 

爪白癬は、蜂窩織炎を引き起こすこともあるため、治療を行うことが望ましいと考えます。

外用剤の効果もあるようなので、外用剤を行いつつ、灸も併用するといいかもしれません。併用効果の検討された報告があるといいのでしょうが。